日本人は昔から米や餅を食べてきたため、もっちりとした食感は食文化に根付いており、多くの人に愛されています。弾力感があり食べ応えを感じられるパンは、食べていて楽しい気持ちにさせてくれます。この記事では、もっちりとしたパンの特徴や製法、家庭で作る際のポイントについてご紹介します。
◎もっちりとしたパンの特徴
もっちりとしたパンの特徴は、弾力や粘り、湿り気と濃密さで構成されていることです。構成を生み出しているのが、グルテンの形成とでんぷんになります。グルテンは、2種類のたんぱく質が絡み合い形成されています。パン生地の弾力になる「グルテニン」と粘性になる「グリアジン」が、水を加えるとつながっていくのです。生地を捏ねるなどの外部刺激により、たんぱく質は複雑に絡み合い網目状の構造を形成します。これが弾力と粘りの元となり、パンのもっちり感を生み出すのです。
パン作りで使用する小麦粉の種類を変えることも、もっちりとした食感を生むためには有効となります。グルテンに影響するたんぱく質の量が、粉の種類により異なるためです。高たんぱくの準強力粉や強力粉、超強力粉を使えばグルテンが強化され、もちもちとした噛み応えになります。国産の強力粉は、でんぷん構造が輸入小麦と異なり粘度が高いため、弾力のある食感に仕上がるでしょう。
パン作りで使用する小麦粉は、70%以上がでんぷんです。でんぷんはグルコースが多数結合してできたもので、もっちりとした食感に大きく影響します。水を加えて加熱すると水分を吸収してやわらかくなり、粘度が高まって糊化するのです。糊化したでんぷんをパン作りに用いることで、しっとりとして弾力のある食感が作り出されます。しかし冷えたまま放置すると、水分が放出されて硬い結晶構造に戻り、でんぷんの老化が進みます。すると、パサパサした硬い食感のパンになってしまうため、注意が必要です。でんぷんの粘度は加熱温度や加える水の量によって異なり、パンの食感に大きく作用しているのです。
◎パンがもっちりする製法
パンのもっちりとした食感は、湯種製法とストレート法によって生み出されます。湯種製法は、小麦粉に熱湯を混ぜて糊状にした湯種を使う作り方です。湯種は多くの水分を吸収し、食感を演出するだけでなく小麦の甘さも引き出してくれます。そのため、パン生地に混ぜると粘度の高いもっちりとした食感になります。吸水性の高さで時間が経過してもパサパサしにくく、パンのおいしさを長く楽しめるでしょう。デメリットは、湯種の生地がべたべたするために分割や成型の難易度が高くなることです。加熱時にパンの側面や上部がへこみやすくなったり、製造過程で焼き色が強くついたりすることもあるため注意が必要です。湯種製法は大手メーカーでも広く使われており、製パン機械や粉の配合などを工夫してデメリットを克服し、大量生産に対応しています。
ストレート法はパン作りにおける基本的な工程で、すべての材料を1度に混ぜ合わせる製法です。基本的な作り方で作業工程が少なく、もっちりとした弾力のあるパンが作れます。噛み応えが出て素材の風味を楽しめるため、フランスパンのようなシンプルなパン作りに向いています。発酵時間が短く場所をとらないため、ベーカリーで使われている製法です。作った日に製品を提供できるベーカリーと違い、工場では消費者に届くまで時間がかかるため、ストレート法でのパン作りは難しいでしょう。パン生地の柔軟性や伸展性が劣り機械によるストレスを受けやすくなることも、工場でストレート法が用いられにくい理由となっています。
◎家庭でもっちりとしたパンを作るポイント
家庭でもっちりとしたパンを作る際のポイントは、湯種を使用して生地を作ることです。まずは、強力粉に熱湯を加えて素早く混ぜ合わせます。水の温度が低いと糊化しないため、注意が必要です。ひとまとまりになったら粗熱をとり、ラップに包み冷蔵庫で12時間以上寝かせます。寝かせた生地は、糊化してお餅のように伸びがよくなります。次に本ごねの生地作りです。湯種以外の材料を混ぜたら、しっかりと捏ねてグルテンの形成を強化してください。湯種生地は、熱湯を加えるためグルテンが壊れてしまいます。パンが膨らむためには、本ごねでグルテンを形成させることが大切です。
捏ねあがった本ごね生地に、30~50%の割合で湯種を合わせます。湯種は団子状にかたまっているため、ちぎりながら均一に混ぜ、生地全体をしっかりと捏ねることが大切です。発酵や分割などの工程は、通常と同様に進めていきます。湯種を用いた生地はべたつくため、手や台に少し粉をまぶすと作業しやすくなります。発酵しにくい生地となるので、ストレスをかけずに優しく扱うことが重要です。
もっちりとしたパンには、プレッツェル、ベーグル、湯種食パンなどがあります。ベーグルは、焼く前に熱湯でゆでて生地表面を糊状にします。糊の層でコーティングされるため、焼いても水分が抜けずに生地の目が詰まって独特の食感を生み出すのです。もっちり感を出す工夫としては、材料を混ぜたり粉を変えたりすることも効果的です。米粉を混ぜたりタピオカでんぷんを使い無発酵の生地でパンを作ったりします。タピオカでんぷんの生地はポンデケージョといわれ、食感が特徴的で人気があります。このように、もっちりとした食感は多くの人が望むおいしさとして、生活に溶け込んでいます。
◎まとめ
人気のあるもっちりした食感とは、食べたときにやわらかい弾力と粘りのある口当たりです。日本の食文化に根付いた感覚が、パンでも広く求められるようになっています。製法や工程に工夫を加えることでさまざまな食感を生み出せるため、パンの楽しみ方は今後も広がっていくでしょう。KOKIでは、パン作りで必要な分割機や丸目機を中心に製パン機械に関わる開発を行っております。製パン機械についてのご相談やご質問などは、当社までお気軽にお問い合わせください。