バターを使うパンは、芳醇な香りや贅沢な味わいを楽しめます。バターを生地に混ぜ込む作業は、タイミングや温度管理が課題となるためミキサーがあると便利です。この記事では、バターを使用するパンの特徴や家庭用のミキサー、製パン機械の横型ミキサーについてご紹介します。
◎バターを使用するパンの特徴
バターを使用するパンには、生地に練り込んだり折りこんで作るタイプがあります。練り込むタイプには、バターロールや食パンがあり、ソフトなふっくらとした軽い食感が特徴です。折り込むパンでは、クロワッサンやデニッシュが代表的です。バターを折り込むことで焼成時に生地がしっかり膨らみ、きれいな層を作ります。生地内の炭酸ガスが熱で膨張するとともに、油脂に含まれる水分が熱で蒸発し、生地の層が1枚ずつ押し広げられて浮き上がります。このようにして層構造が形成され、サクサクした食感を生み出します。また、油脂がグルテン構造に入り込んで結合を阻害するため、歯切れがよい口当たりになります。出来上がったパンは、バターが生地間に残っているので、味や香りをダイレクトに感じられるでしょう。
パン作りでバターを使用すると、油脂がグルテンを包み込んで生地の伸展性を向上させます。固形の油脂には、外からの力によって自在に形を変える性質(可塑性)があります。生地を捏ねるとグルテンに油脂の膜が広がり、生地同士の抵抗を少なくします。その結果、生地の伸展性がよくなってストレスに対する耐性がつき、傷つきにくく強いパン生地となるのです。油脂は水分と乳化して蒸発を防ぐ作用もあるため、バターを使うと時間が経過してもパサつかず老化しにくいパンになります。また乳糖が残って表面がカラメル化し、香ばしい焼き色になる効果もあります。
◎パン作りでバターを混ぜるときのコツ
パン作りの際は、バターの状態と投入するタイミングが重要です。冷えたバターを綿棒でたたき、可塑性を引き出してから生地に混ぜます。バターは15℃前後で可塑性のある状態となり、20℃前後でやわらかくなります。生地と油脂を同じ温度帯に調整すると、伸展性と可塑性が同じくらいになり、生地全体へ均一に馴染みやすくなります。ただし30℃前後になると溶けてしまい、混ぜると油脂が分離してコシのないパン生地になるため注意しましょう。バターは1度液状化すると、組織が壊れて風味や口当たりが悪くなるため、温度管理が重要です。
バターを投入するタイミングは、生地に薄い膜ができて伸ばしても切れない状態を目安とします。材料を合わせる段階から入れてしまうと、油脂がグルテン形成を阻害してしまうため作業効率が悪くなります。このような理由から、バターを加えるタイミングの見定めが重要です。バターが丁寧に混ぜ込まれていないパン生地は、表面に油がまとわりついてテカテカしてしまいます。膨らみが悪くならないように、混ぜる際は表面に張りや弾力が出るまで捏ね上げます。とはいえ、捏ねすぎると生地がダレてしまい、グルテンが弱くなってしまうため調整が必要です。油脂が含まれたパン生地は温度管理が重要で、スピーディな作業が求められます。工場やベーカリーでは、製パン機械のミキサーを使用して効率的に作業を行います。安定した製品を生産する必要がある場合は、ミキサーのような製パン機械が重要な役割を果たすのです。
◎作業効率を上げる便利なミキサー
パン生地の温度が上がるとバターは溶けて混ざりにくくなります。そのため生地温度を上げないよう、作業をすばやく行う必要があります。家庭では、スタンドミキサーがあると便利です。ミキサーは、生地のなかに空気を含ませながら混ぜられる機械です。力が必要な捏ね作業の労力を軽減するだけでなく、きめの整ったしっかりと膨らむパンが作れます。ミキサーの種類はさまざまで、作業を自動化できるプログラム機能などがついている高性能タイプもあります。パン作りに慣れていない場合は、スピード調整の段階が少ないミキサーを選ぶとよいでしょう。ミキサーの活用で作業速度は上がり、バターの美味しさを保持できます。ただしミキサーを使用するときでも、必ず手でグルテン形成を確認してパン生地の状態を見極めることが重要です。
パンの種類によって捏ね方もさまざまですが、家庭で作る際もミキサーを使えば挑戦できる幅は広がります。ベーカリーでは、縦型ミキサーやスパイラルミキサーといった中型の製パン機械が使われます。縦型ミキサーは、フックがパン生地をボウルの内側に叩きつけるように動く機械です。スパイラルミキサーは、フックだけでなくボウルも回転する構造により、捏ねすぎを防ぎます。パンの種類に適したミキサーを選択すれば、多種多様な生地にも対応できるのです。
◎大量生産に対応できる製パン機械の横型ミキサー
工場では製品を大量生産しており、膨大な量に対応できる大型ミキサーなどの製パン機械を使用します。パン生地の重量は数百キロ単位となり、材料の投入から排出まで自動化したミキサーが必要です。ミキサーには、優れた伸展性と高い吸水性をもった生地作りも求められます。そのため多くの工場では、製パン機械の横型ミキサーが導入されています。横型ミキサーには、ボウル壁面との隙間が異なるY字形のアジテーターが2~3本ついています。求める生地の状態に合わせて、ミキサー内のアジテーターとボウル壁面の距離を調整できます。生地の吸水率を高める場合には距離を狭くして、硬めにするときは広くするなど、多様な状態に対応可能です。
油脂をしっかりと使用しているパン生地は、ミキシングを多くする必要があります。横型ミキサーには強力な撹拌力があり、短時間での生地作りが可能です。パン生地を捏ねる作業は摩擦による熱を生み、練り込まれた油脂を溶かしてしまいます。そのため、ミキサーには冷却装置が組み込まれているタイプもあり、生地温度が上がらないように調整されています。工場では同じ品質のパンを届けられるように、横型ミキサーのような製パン機械が使われ、作業効率の向上に貢献しています。
◎まとめ
バターを使用するパンは、捏ねや温度管理などに注意が必要です。工場では製パン機械の横型ミキサーを使用することにより、品質が保たれています。KOKIは、製パン機械の開発に取り組んでいます。製パン機械を検討している方は、お気軽にお問い合わせください。