パンの製造には、さまざまな工程が必要です。生地をこねて発酵させるだけでなく、できた生地を分けて成型し焼くといった工程を経て、おいしいパンができあがります。
かつてはすべて手作業で行っていた製パンですが、今では多くの工程で機械が使用されるようになりました。製パンの工程に機械を導入することで、たくさんの量を製造しつつ品質を安定させることができるようになります。
今回は、そんなパンの製造で欠かせない分割機について、その歴史や種類などをご紹介します。
◎分割機とは
製パンの工程のなかで分割機が使用されているのは、パンを焼き上げる前の発酵させた生地を切り分ける工程です。デバイダーとも呼ばれている分割機ですが、ひとことで分割機と言っても、分割機の種類によって大きさや性能などに違いがあり、大きなパン工場から街のパン屋さんまで、さまざまな製パンの現場で使用されています。パン生地を切り分ける作業に、わざわざ分割機を導入しているのはなぜでしょうか。
大手パンメーカーが製造を行っているような大きなパン工場では、毎日大量にパンを焼き上げ、同じ品質のパンが店舗に並べられるように作業しています。そのような工場で製品の品質を保つためには、大量のパン生地から同じ分量に生地を切り分けて、同じサイズのパンを焼き上げるようにしなければなりません。特に日本では、同じ製品は同じ分量という正確さを求める傾向があるため、街のパン屋さんであっても、同じ種類のパンはどれも同じサイズで焼きあがるように製造している店舗が多いです。
それで製パンの工程では、より正確に、また手間のかからない方法でパン生地を分割するために分割機が必要とされ、多くの現場で導入されています。
◎最適な分割機とは
分割機は、ただ生地を分けるだけでなく、ほかにも求められているポイントがあります。まずは正確な量で生地を分割できることです。生地を分けられても分量がまちまちであれば、同じ製品ができないだけでなく、発酵する時間や焼く時間にも違いが生じてしまいます。そうなると分割機を使用する意味がなくなってしまうため、これは1番重要なポイントです。
また生地を傷めないことも大切です。生地を傷めてしまうと、膨らみが足りなかったり色むらができたりしてしまいます。切り分ける作業では、どうしても生地が圧縮されてしまうため、できるだけ生地を傷めずに切り分けられる分割機が必要です。柔らかい生地や硬めの生地、パンの大きさなどの違いによって最適な分割機が異なるため、製造するパンに合った分割機を選ぶことができます。
また衛生面の観点から、清掃などのメンテナンスが簡単にできるという点もポイントとなります。
◎分割機の種類
分割機にはさまざまな種類があり、製造するパンの量や設備の大きさによって、導入する分割機を選ぶことができます。すべての作業を機械が行う全自動の分割機だけでなく、半自動や手動の分割機もあります。
手動の分割機は、生地をセットしてハンドルを引くと生地を分割できる簡易的な分割機です。セットする生地の量を変えることで、製造するパンのサイズに合わせた分割ができ、電気設備がなくてもすぐに導入可能です。
半自動の分割機は、生地の分割と分割した生地を丸める工程までが一体になっているものが多く、分割は手動で行い、丸める工程は自動になるなど、手作業と自動の工程が半々になっています。
全自動は、生地を切り分けるすべての工程を自動で行う分割機ですが、全自動の分割機は、その中でもたくさんの種類に分かれています。
まず能力にも違いがあります。小能力から高能力まであり、小型のパンを製造するために適している小能力の分割機から中型のパンに適している中能力の分割機、食パンなど大型のパンを製造するために適している高能力の分割機に分かれています。
また半自動の分割機のように、丸める工程を行う丸目機と一体型になっている分割丸目機と呼ばれる分割機もあります。分割丸目機は、省スペースでの作業ができ、よりシンプルな構造になるためメンテナンスも簡単です。
ほかにも、生地を切り分けるのではなく、吸引によって生地を分ける吸引式分割機もあり、生地を圧縮してしまう「切る」作業を行わないため、生地を傷つけにくく、吸水率が高いパン生地でも分割ができる分割機です。
◎まとめ
分割機は、パン生地を同じ分量ごとに切り分けるための機械です。作業工程を簡易化させつつ、より品質を安定させることができるので、多くの製パンの現場で導入されています。