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パン生地をつくる上で知っておきたい!製パン法の種類

2022年4月19日
おいしいパン生地をつくる上で、製パン法の種類を知っておくことはとても重要です。パン生地は使う材料はもちろんのこと、製パン法によって味や香り、食感が大きく変わります。今回はさまざまな製パン法についてご紹介します。
◎製パン法とは
製パン法とはパン生地づくりの方法のことを指します。パン生地はイーストまたは天然酵母のどちらを使うか、どのぐらいの時間をかけてパン生地を発酵するか、また同じ材料でも配合量をどれほど変えるのかなどによって仕上がりが大きく変わってきます。製パン法は細かく分けると約20通りありますが、その多くは「ストレート法」「中種法」と呼ばれる主な2つの製パン法を応用した形になります。これからパン生地づくりをはじめる方は、まず基本となるストレート法と中種法を覚えておくと良いでしょう。
◎ストレート法
パン生地に必要な材料をまとめて1度にミキシングする製法をストレート法(直捏法)と言います。必要な材料を投入するだけでパン生地が簡単にできるホームベーカリーはストレート法が採用されています。
 
ほかの製パン法と比較するとストレート法は作業工程が少ないため、短時間で簡単にパン生地をつくることができるのが大きな特徴です。フランスパン、クロワッサン、デニッシュなど、どちらかといえばセミハードなパン生地づくりに向いています。風味豊かで、モチモチとした弾力のあるパン生地に仕上がる長所がありますが、一方でボリュームが出ない、大量生産できないといった短所もあります。また、ストレート法のパン生地は伸展性が悪く、機械にかけると生地が傷んで劣化が早くなってしまうのも1つのデメリットです。パン生地の日持ちを優先したいときは、あまり適していない製パン法といえるでしょう。さらにストレート法はシンプルな製法である分、ストレート法をつかって美味しいパンをつくるなら、材料の配合量や捏ね方など、基礎的な部分をしっかり学んでおくことが必要です。
 
ストレート法を応用した製パン法はオートリーズ法やノータイム法などが挙げられます。オートリーズ法は、最初に水と小麦粉のみを混ぜて30分ほどパン生地を寝かせ、その後ほかの材料を全て加えてミキシングを再度行う方法で、一般的にはフランスパンのストレート法の仕込みで使われます。パン生地の進展性がアップし、パンの形成がしやすくなることがメリットとして挙げられます。
 
ノータイム法は、文字通り発酵する時間を大幅に短縮してパン生地をつくる方法です。発酵時間が0~30分ほどであるため、短時間でパン生地をつくることができますが、一方で熟成香が出にくく、ストレート法に比べると風味が物足りなくなるという欠点もあります。

◎中種法
中種法はパン生地づくりに使用する小麦粉の一部、あるいは全てを先に発酵させて中種をつくったあとに残りの材料に混ぜ合わせ本仕込みする製法です。きめが細かくソフトでボリュームのあるパン生地に仕上がるため、ふんわりとした仕上げにしたい食パンなどに適しています。
 
中種法でつくられたパン生地は進展性が高く、デバイダーやモルダーなどの機械にかけても傷みにくいのが特徴です。そのため、日持ちを優先する中規模から大規模の製パン工場では、ストレート法よりも中種法のほうが多く採用されています。また、中種法はパン生地に使用する小麦粉の50%以上を中種に使用し、つくった中種は最低2時間以上発酵させるという2つの条件を満たす必要があるのも大きな特徴です。
 
この2つの条件を満たしていない場合はその他の製法でつくられたパンとして扱われます。一般的には3~4時間ほど発酵させるため、ストレート法に比べると中種法はどうしても所要時間が多くかかってしまいます。加えて、中種法でパン生地をつくる場合は中種を発酵させるためのスペースや設備が必要となります。
 
中種法を応用した製パン法としてはオーバーナイト中種法、加糖中種法などが挙げられます。前日につくった中種を一晩寝かせ、翌日にパン生地をミキシングする方法はオーバーナイト中種法といいます。また、中種を寝かせる際に冷蔵庫を使うときは冷蔵中種法とも呼ばれます。中種がじっくり発酵、熟成されるため、通常の中種法でつくるよりも酸味や香りが優しいパン生地に仕上がります。
 
もう1つの加糖中種法は配合する砂糖の一部を中種に加えて発酵させる製法です。クリームパンやジャムパン、メロンパンなど、砂糖が多く含まれる菓子パンなどによく使われる方法です。菓子パンは砂糖の配合量が多いため、通常の中種法でつくられたパン生地に比べて、発酵する時間がやや長くなる傾向があります。

◎そのほかの製パン法
ストレート法や中種法以外の製パン法として、発酵種、液種を使用する方法もあります。発酵種法は水と小麦粉を混ぜて発酵させた種を事前に仕込んでおき、それをあとからミキシングしてパン生地を仕上げる製法の総称を指します。サワー種法、ルヴァン種法なども同様の製パン法となります。普段のパン生地づくりにプラスするだけで、長時間発酵させたような香りや旨味を簡単に出すことができます。
 
液種を使った製パン法はポーリッシュ法と呼ばれ、パン生地に使う分量のうち、20~30%の小麦粉に同量の水を加えてポーリッシュ種を作り、後で残りの材料をミキシングする方法です。19世紀にポーランドで考案された製法で、現在はフランスパンをつくる際によく採用されています。

◎まとめ
パン生地の仕上がりは小麦粉の熟成と水和、さらに発酵時間によって決まります。製パン法のほとんどはストレート法、または中種法に分類されます。どの製パン法にもメリット・デメリットが存在するため、パン生地をつくる際はそれぞれの製パン法の特徴を理解し、求めている仕上がりや状況に応じて適した製法を選ぶことが大切です。
 
奥深い製パン法ですが、まずは基本となるストレート法、中種法をしっかり押さえ、それから応用した製パン法や発酵種、液種を使った製法を覚えていきましょう。