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製パンに使う乳製品の役割と種類

2022年7月5日
パンのレシピには、牛乳やスキムミルクなどの乳製品を使うものが豊富にあります。なかには乳製品を使用しないパン生地もありますが、乳製品を使うことで仕上がりにどのような違いが出てくるのでしょうか。この記事では、パン生地づくりにおける乳製品の役割や種類についてご紹介します。
◎製パンにおける乳製品の役割
製パンにおける乳製品の代表的な働きとしてあげられるのが、パン生地の発酵を遅らせることです。発酵はふっくらとしたパンをつくるために欠かせない活動ですが、発酵が進みすぎると、パン生地に含まれる糖分がイーストにより分解されすぎて、甘みが少なくなったり焼き色が付きにくくなったりします。過発酵のパン生地は形を保つ力が弱くなるため、パンを焼きあげた時に陥没したり、しわが寄ったりしやすくなります。
 
そこで発酵を遅らせる目的として、パン生地に乳製品が使われる場合があります。なぜなら牛乳には、パン生地の発酵を妨げるカゼインというタンパク質が含まれているからです。なかにはスキムミルクのように加熱処理によってカゼインが変性しているものや、ホエイミルクのようにカゼインを取り除いているものもありますが、これらの粉乳は吸水効果によってパン生地が引き締まるため、牛乳と同じく発酵スピードが遅くなります。砂糖が多く含まれているパン生地は発酵スピードが早いため、食パンや菓子パンなどをつくる場合はパン生地に乳製品を加えるのがおすすめです。
 
乳製品はパンに甘みをプラスしたい時にも適しています。通常、パン生地に含まれている糖分(砂糖)はイースト菌によって分解されますが、乳糖はイーストにほとんど分解されません。乳脂肪分が含まれている乳製品は乳糖の甘みに加えて濃厚な味わいもプラスされるため、パン生地に加えると風味豊かでミルキーなパンに仕上がります。また、乳糖はパン生地を焼き上げた時のカラメル化により、パンの表面にきれいな焼き色をつける効果もあります。
 
乳製品はタンパク質、脂質、糖質に加え、ビタミンやカルシウムなど豊富な栄養素を含むことから、パンの栄養価を高くしたい時にもおすすめです。とくに栄養価の高いパンをつくりたい時に適しているのが、牛乳や全粉乳といった乳脂肪分が取り除かれていない乳製品です。スキムミルクなど、乳脂肪分が取り除いた乳製品は脂質や脂溶性のビタミンが含まれていないため、牛乳や全粉乳に比べると栄養価がやや低くなります。
ただ、スキムミルクはスキムミルクで脂肪分が少ない分、グルテンの形成や発酵に影響が少なく扱いやすいパン生地がつくれる、ヘルシーなパンに仕上がるといったメリットもあります。製パンに慣れてきたら、ぜひつくりたいパンに応じてそれぞれの乳製品を使いわけてみましょう。
◎製パンの材料に使われる乳製品の種類
製パンの材料に使われる乳製品は牛乳やスキムミルクをはじめ、さまざまなものがあります。ここではパン生地づくりで主に使われる乳製品の種類をご紹介します。
 
○牛乳
牛乳は搾取した牛の乳を加熱殺菌したものです。
全体の87.4%が水分、12.6%が固形成分でできているため、製パンの際に水の代用品として牛乳を使用すると、パン生地が締まって固くなる傾向があります。
そのため、水の代わりに牛乳を使う場合は、配合量に注意することが必要です。パン生地が締まるのを防ぎたいのであれば、固形成分の量に合わせて、12.6%水分量を増やすのがおすすめです。細かく分量を量るのが難しい場合は、水の分量よりも約10%多く牛乳を加えるようにしましょう。

 
○粉乳
粉乳は牛乳の水分を蒸発させて粉末状にしたもので、全脂粉乳やホエイパウダーなどさまざまな種類があります。長期保存できるため、頻繁にパンづくりをする人にとっては牛乳よりも使い勝手が良いでしょう。
製パンにおいて最も使われているのが、牛乳から脂肪分を取り除いたスキムミルク(脱脂粉乳)です。スキムミルクは牛乳に比べて安価で手に入れやすく、ヘルシーな原材料としても注目されています。脂肪分を取り除いている分、あっさりとした味わいのパンに仕上がるのが特徴です。スキムミルクを使ってパン生地をつくる場合は、小麦粉の2~3%の分量を加えます。
一方、牛乳をそのまま粉末にした全脂粉乳はミルクの風味が濃厚なパン生地をつくることができます。ホエイパウダーは、チーズを製造する時に液体として残るホエイ(乳清)を粉状にしたもので、水溶性のタンパク質やビタミン、ミネラル分を豊富に含んでいるのが特徴です。

 
○クリーム
クリームは生乳から脂肪分を取り出したもので、一般的には生クリームやフレッシュクリームと呼ばれています。乳脂肪分が高く、パン生地に加えることでコクのあるしっとりとしたミルク風味のパンに仕上がります。

 
○ヨーグルト
ヨーグルトは牛乳を乳酸菌や酵母で発酵させたものを指します。酸味があるため、サワー種のパン生地をつくる時に適しています。製パンの材料にヨーグルトを使用する際は、基本的に砂糖や香料が加えられていないプレーンタイプが使われます。

◎製パンで牛乳とスキムミルクを置き換える場合
パン生地づくりに使われる乳製品のなかでも、とくに使用されることが多いのが牛乳とスキムミルクです。これら2つはお互いに置き換えて使用することが可能です。ふわふわとした食感にしたい、ミルキーな味わいにしたいなど、その時につくりたいパン生地に合わせて牛乳とスキムミルクを使いわけてみましょう。
 
ここで1つ注意したいのが、牛乳とスキムミルクを置き換える時の分量です。牛乳をスキムミルクに代替してパン生地に加える場合は、牛乳の10%の分量をスキムミルクに、残りの90%を水に置き換えて使います。例えば牛乳を200g使うパン生地をつくる場合、スキムミルクは200g×0.1(10%)で20g、水は200g×0.9(90%)で180g使用します。
 
反対にスキムミルクの代わりに牛乳を使ってパン生地をつくる場合は、スキムミルクの分量の10倍の牛乳を加えます。この時、同時に水も加えますが、水は牛乳の分量から90%分引いた量を使うのがポイントです。スキムミルクを6g使うレシピの場合、牛乳は6g×10で60g、水は60g-(60g×0.9)で6g使用します。

◎まとめ
製パンの副材料である乳製品には、ミルクの風味を出したり、発酵を遅らせたりする効果があります。使用する乳製品によってパンの仕上がりが変わってくるので、慣れてきたらぜひつくりたいパンに合わせて牛乳やスキムミルクを使いわけてみましょう。