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製パンに使う塩の種類と配合量

2022年7月26日
塩はパン生地づくりにおいて欠かせない主原料のひとつです。配合量はほんのわずかですが、塩を入れるかどうかでパンの仕上がりは大きく変わってきます。この記事では、製パンにおける塩の役割やパン生地づくりに適した塩の選び方、配合量についてご紹介します。
 
◎製パンにおける塩の役割
パン生地づくりには卵や砂糖など、さまざまな材料が必要と思われがちですが、実はフランスパンなどのリーンなパンは粉・パン酵母・水・塩のみでつくられています。パンの主原料となる粉や、粉をパン生地にするための水、パン生地を発酵させるパン酵母の必要性は理解できますが、塩はなぜパン生地づくりに欠かせないのでしょうか。まずは製パンにおける塩の役割を見ていきましょう。
 
大きな役割としてあげられるのは、パン生地に適度な塩味をつけることです。わかりやすく「しょっぱい」と感じることはありませんが、塩を加えているかどうかでパンの味はまったく違います。フランスパンなどのように、砂糖やバターを使わない場合はとくに違いがあらわれやすくなります。リーンなパン生地は材料がシンプルなだけに、塩を加えなければ小麦の甘みが引き立たず、味気のないパンに仕上がってしまいます。
 
塩を使うことでグルテンを強化させる効果があります。グルテンとは粉に水を加えてこねた時にできる網目構造のことで、パン生地を発酵させた時に生成される炭酸ガスを保持する役割があり、ふわふわとしたパンをつくるのには欠かせません。グルテンは発酵が進むにつれてどうしても網目が緩みがちになりますが、製パンの過程で適量の塩を加えることで、グルテンが引き締まり、コシのあるパン生地に仕上がります。
 
塩には菌の繁殖を抑える力もあります。すべての菌に働きかけるため、パン酵母(酵母菌)にも作用してしまうのがネックですが、パン生地に加えることで雑菌の繁殖を抑えてパンの日持ちを長くすることができます。

◎製パンに使われる塩の種類
塩にはいくつかの種類がありますが、製パン用としてつくられているものはありません。ただし、粒子が粗いものはパン生地に練り込みにくいため、練り込み用の塩を選ぶ場合は粒子が細かいものを選ぶのがおすすめです。塩は種類によって味わいが微妙に変わります。パン生地にこだわるなら、それぞれの塩の特徴を押さえておきましょう。
 
○精製塩
電気分解により原塩を精製したもので、いわゆる「食卓塩」「焼き塩」と呼ばれるものが該当します。家庭での製パンで主に使われているのもこの精製塩です。
塩化ナトリウムが成分の99%以上を占めており、苦み成分となるマグネシウムやカリウムが取り除かれています。同じ分量を加えた場合であっても天然塩を使ったパン生地よりしょっぱく感じるのが特徴です。
 
少量でも味が強く出やすいため、リッチなパン生地と相性抜群です。砂糖や牛乳、バターなどを使ってパン生地をつくる際に使ってみてくださいね。

○海塩
海水を天日や釜炊きで蒸発させてつくったもので、マグネシウムやカリウムなどが豊富に含まれているのが特徴です。これらのミネラルには苦みがあり、塩化ナトリウムの辛みをやわらげる作用があります。そのため、製パンに使用することで精製塩を使ったパン生地よりも甘みを引き立たせることができます。
 
リッチなパン生地にも合いますが、まろやかな味わいなのでリーンなパン生地をつくる時や味付けのアクセントに使うのもおすすめです。パン屋さんではフランス産の「ゲランドの塩」や沖縄産の「シママース」などが使われています。

○岩塩
地殻変動によって海底が隆起し、地上に溜まった海水が長い年月をかけて結晶化したものです。粒子が非常に粗いため、通常パン生地に混ぜて使われることはありません。一般的には塩パンやフォカッチャ、プレッツェルなどのトッピングに使われます。
 
同様に、湖塩やフレーバーソルトもパン生地に混ぜ込むのではなく、パンの表面にまぶして使うのが一般的です。

◎製パンに適した塩の配合量
パン生地に味をつけたり、グルテンを引き締めたりするには、小麦粉に対して1~2%の塩が加えることが必要です。例えば小麦粉を100g使ってパン生地をつくる場合は、1~2gの塩が適量となります。
 
パン生地に加える塩の量が多すぎると、パン生地の発酵が抑制されて生成される炭酸ガスが少なくなってしまいます。また、パン生地が締まりすぎて進展性に欠けるうえ、炭酸ガス不足で窯伸びもしません。もちろん塩味も強くなるため、しょっぱくてボリュームの少ないパンに仕上がってしまいます。
 
反対に塩を全く加えていないパン生地は、グルテンを強化することができないため、ミキシングの際にパン生地がダレたりベタついたりします。パン生地の発酵が抑制されないため過発酵しやすく、パサパサとした口当たりのパンに仕上がりやすくなります。
 
製パンに適した塩の配合量は、つくりたいパン生地によってさらに細かく違ってきます。メロンパンやクリームパンなどの菓子パンをつくる場合は、ほかのパン生地をつくる時よりも塩の配合量を減らしたほうが砂糖とのバランスを上手くとることができます。目安としては小麦粉に対して1%前後の塩を加えるのがおすすめです。同様に、トッピングとして後から塩をまぶすパンも、パン生地に加える塩の量は減らしたほうがよいでしょう。
 
フランスパンや食パンなど、リーンなパン生地は小麦粉に対して1.5%程の塩を加えるのがおすすめです。とくにライ麦粉や全粒粉のみでパン生地をつくる場合はグルテンが形成されないので、生地がダレないように必ず適した分量の塩を加えましょう。食べる時にバターを塗ったり、味付けした総菜を加えたりする場合は、それよりも少し塩分量を減らしてみるのもよいでしょう。

◎まとめ
塩味をプラスしたり、グルテンを強化したり、塩は小麦粉や水と同じく製パンに欠かせない材料の1つです。製パン用につくられている商品がないため、適切な配合量さえ守れば、どの塩を使ってもおいしいパン生地をつくることができます。商品によって味わいが若干違ってくるので、ぜひいろいろと試してみてください。