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パンを運びながら既定の温度に下げるクーリングコンベア

2022年9月20日
パン工場で使用する製パン機械にはさまざまな工夫が凝らされていますが、美味しいパンを製造したり品質を安定させたりするためだけでなく、工程にかかる時間の短縮や設備のスペースを有効に使うことなども考えて開発されています。パンの焼き上げ後の工程で使用するクーリングコンベアも、そのような製パン機械の1つです。この記事では、クーリングコンベアとはどのような製パン機械なのか、クーリングコンベアの種類などについてご紹介します。
 
◎パンの焼き上げ後に行うクーリング
パンは、生地をこねたり発酵させたり、成形して型に詰めるなど、焼き上げにいたるまでにさまざまな工程が必要です。パン工場では、大量生産を行うために製造ラインを使用して製造を行っており、それぞれの工程で専用の製パン機械を使います。パンの製造と聞くと、焼き上げまでの工程を想像する人が多いかもしれませんが、パン工場での製造の場合、スーパーに並んでいる状態の製品にするために、焼き上げのあとに行う工程も多くあります。そんな焼き上げ後に行う工程のひとつが、クーリングと言われるパンを冷却する工程です。
 
オーブンで焼き上げたパンは、まず型を外すパンニングという作業を行いますが、店頭に並ぶ状態にするには、さらに加工したり包装したりする必要があります。食パンであればスライスする作業や、菓子パンであればクリームやチョコといったフィリングを詰めるためにパンをカットしたり充填したりする作業を行います。オーブンから出たばかりのパンは、焼きたてで高温の状態のため、スライスするとパンが柔らかくてカット面が平らになりません。また包装する場合も、焼きたてでは包装内の温度が高くなってしまい、室温との温度差によって包装のなかに結露が生じてしまうため、作業はできません。
 
そのため、焼き上げたパンはパンニングしたあとに、中心温度を室温くらいまで下げるよう冷却する、クーリングの工程が必要になります。クーリングの工程は、ただパンを冷却すれば良いという単純なものではなく、冷却の過程がパンの品質にも影響を与えるため、パンの製造のなかでも重要な工程です。パンを冷却する際、水分が蒸発してパンの体積が減少するので、急激に温度を下げるとパンが縮んでしまいます。パンが縮まないようにするために、クーリングはゆっくりと時間をかけて行います。またクーリングの際に湿度の管理も厳密に行ったり人の手で触れないようにしたりして衛生管理を徹底することで、品質の安定したパンを製造することができます。

◎パンを運びながら温度を下げるクーリングコンベア
クーリングコンベアは、クーリングを行うための製パン機械のひとつです。ベーカリーなどの店舗では、ラックに並べてクーリングを行う場合が多いですが、パン工場のような大量生産を行う現場では、クーリングコンベアや連続式冷却庫、真空冷却など大型の製パン機械が使用されています。一般的にコンベアとは、物を一定の方向に一定のスピードで搬送するための装置のことを指しており、クーリングコンベアは、型から出したパンを包装や加工をする製パン機械まで運ぶ役割も果たしつつ、運んでいる間に決められた温度までパンの温度が下がるようにレイアウトされています。
 
クーリングのために使用される製パン機械は、搬送設備と空調設備に分けることができ、クーリングコンベア自体は搬送設備です。空調設備と一体型になっているクーリングコンベアやブレッドクーラーなどのパンを冷却するための空調設備が導入されているクーリングコンベアがあります。パンの品質を守るために、クーリングはゆっくり時間をかけて行うことが多いため、大量生産を行っているパン工場では、クーリングを行っている大量のパンが入るスペースが必要です。そのため工場内のスペースを有効に活用できるよう、天井に近いデットスペースにクーリングコンベアが配置されている工場も多くあります。また焼き上がってから包装までの間の衛生状態でパンの日持ちが変わるため、クーリングコンベアのエリアは衛生面に重点を置いて設計されています。

◎クーリングコンベアの種類
クーリングコンベアには、どのような種類があるのか見てみましょう。まずはエンドレス方式と呼ばれている、レイアウトが自在なクーリングコンベアです。天井側のデッドスペースに設置することができるクーリングコンベアで、床側のスペースには、ほかの製パン機械を設置するなどスペースを有効に活用することができます。天井側だけでなく、工場のスペースに合わせてどんなレイアウトに配置することも可能で、立体的なレイアウトや上下、左右のレイアウトも自由自在に配置することができます。製パン機械から別の製パン機械へ移る渡り部の装置がなく、パンが損傷しないというメリットもあります。
 
スパイラルコンベアと呼ばれるクーリングコンベアは、スパイラルという名前の通り、らせん状にコンベアがつながっています。らせん状のコンベア内にあるドラムの空調によって冷却を行うため、クーリングコンベア内ですばやく冷却することが可能で、省スペースで作業を行うことができます。
 
最後は、ドラムレスコンベアと呼ばれるクーリングコンベアです。ドラムレスコンベアは、スパイラスコンベアと同じでらせん状のコンベアですが、スパイラルコンベアと違ってコンベア内にドラムがありません。コンベアの下側からパンを入れて下から出すという流れだけでなく、下側から入れて上側から出すという流れで使うこともでき、ドラムレスなのでコンベアの内部に入って清掃したり、なかのスペースを有効活用したりできるといったメリットもあります。

◎まとめ
クーリングコンベアは、焼きあがったパンを加工や包装のための製パン機械へ搬送し、搬送する間に既定の温度までパンを冷却するための製パン機械です。工場のスペースを有効活用できる製パン機械として開発が行われています。KOKIでは、現場の声を取り入れて、美味しいパンを作るため、また作業の効率化を図るための製パン機械の開発や製造を行っています。製パン機械のお悩みやご相談は、お気軽にお問い合わせください。