大きなパン生地から小さく分ける分割は、製パンで必ず行う作業です。この分割の工程では、すべての生地を均等にわけることが大切になります。家で作る手作りパンなら、多少誤差があっても気になりませんが、ベーカリーやパン工場などで生産する場合は、出来上がるパンの品質につながります。この記事では、分割のポイントや均等にわけるための製造機械「ウェイトチェッカー」についてご紹介します。
◎分割で大切なのは同じ分量に分けること
材料をこねてパン生地を作ったら、製造する製品の大きさに合わせて分割を行います。手作りパンであれば、何個分のパン生地かに合わせて個数分に切り分けますが、ベーカリーやパン工場などでは、大きなパン生地を扱うため、重量を測定しながら均等になるように分けています。分割する際に大きさがバラバラになってしまうと、そのあとに行う発酵の進み具合や、焼き上げでの火の通り方などに違いが生じてしまいます。出来上がりにムラができたり見た目も違ってしまったりするため、同じ量に分けることは大切です。特に大量生産をしている現場では、目標の重量から外れたパンは廃棄され、廃棄分がロスとなってしまいます。大量生産をしているパン工場は、たとえ1%のロスであっても年間で1,000万円以上もの損失につながる場合もあるのです。
また分割では、発酵で発生したガスやグルテンにダメージを与えてしまうので、ダメージを最小限にすることも大切です。パン生地が細切れになってしまうとグルテンが分断されてしまい、パンの膨らみ具合にも影響が出てしまいます。さらに、分けたあとの丸めや成形の工程まで考えて、丸めやすいように分けることも大切です。きれいに丸めができると、その後の成型もきれいにできるため、細長く分割したり三角にしたりするなど、丸めにくい形を避けて行います。
◎手作業で分割を行う際のポイント
ベーカリーやパン工場など、大量生産を行う現場では、小規模か大規模かによって分割や重量を測定する方法が異なります。ベーカリーなどの店舗では、手作業で行うことが多いです。手作業での分割では、重量の測定に竿秤などの秤を使用しています。切り分けている間にも生地は発酵しており、状態が変化していくので、なるべくスピーディーに行うことが大切です。竿秤は使い方に慣れると素早く計量できるため、手作業で行う際に適した道具です。
切り分けには、スケッパーという道具を使います。スケッパーを使って、パン生地を素早くまっすぐに押し切り、前後に動かして切ったり手で引きちぎったりしません。このようにすることで、発酵でできた気泡をつぶさないようにし、ダメージを最小限に抑えます。1回切って測定するだけでは、なかなか正確な重量にならないため、微調整が必要です。微調整の際は、細切れの集まりにならないようにし、調整分の小さな生地は内側に入れて表面がきれいに焼きあがるようにします。
◎正確な分割を行うためのウェイトチェッカー
大きなパン工場など、製造ラインを使って大量生産をしている現場では、製造機械を使って分割や計量を行います。パン生地の分割を行うのは、分割機とも呼ばれているデバイダーという機械です。そして、分割機で均等な量にするためにパン生地の重量を測定する機械は、ウェイトチェッカーと呼ばれています。手作業で行う際は、おおよその大きさにわけて重量を測ってから微調整を行いますが、製造ラインではそのような微調整を行うことができません。そのため、デバイダーとウェイトチェッカーの連携がとても大切なのです。
デバイダーでは、目で見て分ける大きさを決める代わりに、容積によって分割しています。デバイダーのなかには、一定の容量のパン生地が入るポケットがあり、あらかじめポケットの大きさを、分割する容積に設定しておきます。そしてポケット内にパン生地を押し込み、ポケットに入る容積分だけ分割できる仕組みになっています。
パン工場では、1度に大量のパン生地をこねるので、はじめにデバイダーのポケットに投入されたものと最後に投入されたものでは、発酵の度合いが変化してしまいます。発酵が進むとパン生地が膨らんでいくため、同じ容積でも重量が減っていくのです。そのため、デバイダーでわけたあとに流れていく先には、ウェイトチェッカーが取り付けられており、分割されたパン生地の重量の変化を見ています。そして、重量が低下するとウェイトチェッカーからデバイダーにデータを送ります。ウェイトチェッカーから送られた重量データに沿って、デバイダーのポケットを広くし、重量の調整を行います。
多くのパン工場では、分割を均等に行うためにこの方法を用いていますが、ウェイトチェッカーでの測定からデバイダーで修正を行うまでに時間差が生じてしまうことや、新しいパン生地が切り替わるタイミングでの大きな調整に間に合わないといった問題点もあります。当社で開発しているウェイトチェッカーは、デバイダーと一体化しており、双方向のやり取りをスピーディーに行うことが可能です。ウェイトチェッカーでパン生地の変動を常に監視して、品質を安定させています。従来のウェイトチェッカーシステムでは、目標重量の3%ずれないことも不安定な状況でしたが、弊社の新しいウェイトチェッカーでは、目標重量の2%以内に安定させることが可能になりました。一時的に分割する速度を下げることもできるため、新しい生地に切り替わる際の重量調整も安心して行えます。
◎まとめ
分割の工程でパン生地を均等に分けられると、パンの出来上がりを安定させてロスを削減することができます。ベーカリーでは、竿秤を使ってスピーディーに重量を測定しながら分割を行い、パン工場ではウェイトチェッカーとデバイダーを連携させることで均等な分割を行っています。KOKIでは、均等な分割を行うためのウェイトチェッカーの開発や製造を行っています。ウェイトチェッカーに関するお問い合わせは、KOKIまでお気軽にご連絡ください。