パン生地を発酵させるために使われる酵母をパン酵母と呼びます。パン酵母には、一般的なドライイーストのほかに天然酵母があります。この記事では、天然酵母の種類やドライイーストとの違い、天然酵母を作る方法についてご紹介します。
◎パン生地の発酵に欠かせないパン酵母
酵母とは、適度な温度と湿度の条件が揃うことで発酵する、丸い形をした単細胞生物です。そのため、酵母はカビやキノコといった菌類に属しています。自然界には多くの酵母が存在しており、なかでもパン生地作りで使われる酵母とされているのが、イーストと天然酵母です。パン酵母は糖分と水が結びつき、温度など一定の条件が揃うことで、パン酵母が増えてパン生地の発酵がはじまります。
発酵がはじまると酵母から炭酸ガスが排出されますが、その炭酸ガスの働きによってパン生地が膨らむ仕組みとなっています。パン生地は内側から膨らんでいくので、次第に弾力のあるパン生地へと仕上がっていきます。酵母が活動している間は膨らみ続けるため、オーブンに入れ温度が上がり、パン酵母が死滅するまでは膨らみ続けます。このパン酵母の働きのおかげで、おいしいパンに仕上がるのです。
◎パン生地作りにおける天然酵母とは
パン生地作りで主にパン酵母に使われているのが、パン生地作りに適した酵母を培養して作られたイーストと呼ばれるものです。イーストのほかにも、ブドウやリンゴなどのくだもの、小麦などの穀物に付着している酵母菌を採取して、自然に発酵させた天然酵母と呼ばれるものがあります。天然酵母は、イーストより発酵の力が弱いため、パン生地からパンを作るまでに要する時間が長くなります。ゆっくりと時間をかけながら、パン生地のなかで天然酵母が発酵を繰り返すことによって、香り豊かなおいしいパンを作り上げていくのです。
天然酵母にはさまざまな種類がありますが、大きく2つに分類されます。粉の状態にしたドライタイプの天然酵母と、イチから自分で作る天然酵母があります。ドライタイプは、乾燥させた天然酵母を粉状にしたものです。パン生地に使う際は、粉の状態にした天然酵母を約30度のお湯と1対2の比率で混合させ、24時間温度を保たせて生種として使えるようになります。天然酵母を自分で作る場合は、きれいな容器に、天然酵母の元となるくだものや穀物などを入れます。容器にはひたひたになるくらい多めの水を入れます。あとは、毎日1、2回ほど容器を振ったり蓋を開けるなど空気の入れ替えをして酵母を増やしていくと、2週間ほどで元種として使える天然酵母になります。
◎ドライイーストと天然酵母の違い
一般的にパン生地作りで使われることの多いのはドライイーストです。イーストのなかでも、家庭でパン生地を作る際に広く使われているのはインスタントドライイーストになります。
イーストとは、パン作り専用の酵母を乾燥させて作ったものです。生イースト、ドライイースト、インスタントドライイーストの3種類があります。生イーストは固形状で発酵が早いのが特徴ですが、乾燥しやすいのと時間が経つと発酵力が弱くなってしまうので、早めに使い切る必要があります。ドライイーストは、生イーストを長時間低音で乾燥させたものです。乾燥しているので生イーストより保存は効きますが、事前に予備発酵が必要など発酵に時間がかかります。家庭用で一般的に使用されているのは、使い勝手の良いインスタントドライイーストです。保存期間も長く、予備発酵が不要で発酵時間も短く済むことから、手軽に使えるのが特徴です。
一方、天然酵母を使ってのパン生地作りは時間がかかります。作業効率の面だけで考えると天然酵母を使うと大変だと思われがちですが、ゆっくりと時間をかけるのが天然酵母によるおいしいパン作りの秘密なのです。天然酵母によって作られたパン生地は、少しずつ時間をかけながら天然酵母の発酵が進んでいきます。このゆっくりとした天然酵母の発酵が、パン生地に多くの空気を含ませてふわふわとしたおいしいパンを作ることができます。天然酵母のパン生地で作るパンは、フランスパンなどのハード系のパンが向いています。
◎初心者もできる!天然酵母を使ったパン生地作り
天然酵母は、果物や穀物類に存在している酵母菌を培養して作っています。天然酵母はさまざまな素材で作られますが、初心者の方でも扱いやすいのはレーズンです。レーズンを使うときはオイルでコーティングされていないものを選びましょう。オイルでコーティングされた酵母菌は呼吸しにくいため、うまく増殖しないからです。年間を通して手に入れられるレーズンは発酵も早く、3日ほどで発酵が進みます。
まず、密封できる瓶などのきれいな容器にレーズンを入れます。容器のなかには水でひたひたになるくらいに多めに入れ、毎日1、2回ほど密封した瓶を振ります。蓋を開け空気の入れ替えを行い酵母を培養させていくと、2週間ほどで元種として使える天然酵母になります。
天然酵母を使ったパン生地作りにおいては、ストレート法と中種法があります。天然酵母を使用したストレート法は、すべての材料を混ぜ合わせる方法です。天然酵母を使用した中種法は、パン酵母と水、小麦粉などを混ぜ合わせ、中種という発酵種と作ります。どちらの方法でパン生地を作ってもおいしいパンに仕上がりますが、発酵時間も短く手間も少ないため、初心者の方にはストレート法がおすすめです。
◎天然酵母を作るときの注意点
天然酵母を作る際は、カビがつかないように使う道具をすべて煮沸消毒します。また天然酵母の発酵途中は、容器の空気を入れ替え1日に数回混ぜ合わせて振ることで、カビの発生を防ぎます。天然酵母作りにおいて1番大切なのは、発酵に適している30度の温度を保つことです。温度管理に気をつけながら天然酵母を作りましょう。
◎まとめ
天然酵母を使うパン生地作りは手間と時間がかかりますが、ドライイーストを使うパン生地と比べると、深い風味が味わえます。本格的なパン生地を作りたい方には天然酵母を使ったパン作りに挑戦してみてくださいね。