パン生地作りに卵は欠かせない材料というイメージがありますが、使うのと使わないのとでは、パンの仕上がりに違いがあらわれます。この記事では、パン生地作りにおける卵を使ったときの効果と卵黄と卵白の効果の違いについてご紹介します。
◎パン生地作りにおける卵の効果
パン生地に卵を使うことによって、得られる効果は多くあります。なかでもとくに卵黄は、パン生地作りにおいて重要な役割を持っています。パン生地に卵を使ったときの効果として次の5つがあげられます。
○しっとりとなめらかなパンに仕上がる
パン生地に卵が入ることによって、パン生地をなめらかに仕上げることができます。とくに卵黄の部分には、機能性脂質のレシチンとよばれる成分が含まれています。リン脂質とも呼ばれているレシチンには天然の乳化作用があるため、口あたりがよく、やわらかいパン生地に仕上げることができます。
○パンの老化を遅らせる
焼き上がったパンの水分が抜けて固くなりパサパサしてしまうことをパンの老化といいます。卵の入ったパン生地は、入ってないパン生地よりも、老化のスピードが遅くなります。これも、卵黄に含まれるレシチンの乳化作用が老化を遅らせる働きをしてくれます。
○パンの栄養価を高める
パンに卵が入ることで、パンの栄養価を高めることができます。もともと卵は完全栄養食といわれており、たんぱく質をはじめカリウムやナトリウム、葉酸、ビタミンAなど栄養素が豊富な食材です。そのためパンに加えると高い栄養価をそのままパンに取り入れることができるので、効率よく栄養を摂ることができます。
○パンの焼き上がりが変わる
パン生地に卵を使用することで、焼き上がったパンの断面が黄色く色付きます。これは卵黄に含まれるカロテンが、パン生地を黄色く色付けてくれるからです。黄色く色付いたパン生地は、見た目も美味しそうで食欲をそそります。パン生地を焼く前に生地の表面に卵黄を塗ることで、焼き上がったパンの表面をつやつやときれいに仕上がります。
○パンにコクと風味を与える
パン生地を作るには主に小麦粉や乳製品などを使用します。成分の3分の1が脂質である濃厚な卵が加わることで、小麦の風味に濃厚なコクと風味がプラスされます。深みのある味わいやまろやかな風味のパンに仕上げることができます。
◎卵ありと卵なしのパンの違い
パン作りにおいて卵を使うのと使わないのでは、焼き上がりに差がでてきます。卵なしでパンを作ったときは、使ったときに比べるとボリュームや風味がでにくいです。焼き上がりのパンの断面も、使用しないと黄色く色付くことはありません。ですが、食パンやフランスパンなど、小麦粉そのものの風味を味わうために作られたパンには、あえて卵を使用しないことも多いです。卵を使用したパン生地は、卵黄と卵白それぞれの働きによって、焼き上がりのパンにさまざまな効果をもたらします。
パン作りにおいて卵黄と卵白に分けて卵黄だけを使用すると、卵黄に含まれるレシチンの働きによってパン生地がやわらかく焼き上がります。レシチンの乳化作用によってやわらかいパン生地になるのは、卵白をつかったことによる熱凝固性が起らないためです。卵黄に含まれるレシチンだけが働くことで、やわらかいパンに仕上がります。
卵白は、熱凝固性を持った性質があります。パン生地を作るとき粉と水は溶けやすいのですが、卵白の水分は溶けにくいといった特徴があります。混ざりきっていない自由水がある状態でパン生地を焼くと、卵白に含まれるタンパク質に熱が加わって固まります。この熱凝固性によって、卵白を含むパン生地は固くパサパサした食感のパンになります。
パン生地をやわらかい食感にしたい場合は、卵黄だけを使うようにしましょう。全卵を使用してパンをやわらかく仕上げたいときは、卵白の代わりに水を使用する方法があります。卵白は9割近くが水分で構成されているので、卵白と同じ量の水を加えることで代用が可能になります。
◎パンの表面に美しいツヤを出す塗玉とは
パン生地に溶いた卵を刷毛などで塗って焼くと、表面がツヤツヤしたパンに仕上がります。パンにツヤを出すために、焼く前のパン生地に塗ることを「塗玉(ぬりだま)」といいます。塗玉もコツを掴めば、美しいツヤのあるパンに仕上げることができます。ポイントは卵を溶いたものを塗りむらがないようにしっかりこすことです。丁寧にこした状態を卵液といい、パン生地にむらなく均等に塗ることができます。
卵液の準備ができたら、パン生地に塗る作業になります。美しいツヤを出すための塗り方のコツは、パン生地の表面に傷をつけないようにするため、やわらかい刷毛を使うことです。塗るときは、パン生地の表面をしっかり乾かした状態で、生地に対し刷毛を寝かせて塗ることで後が残りにくくなります。塗るときは、パン生地の表面に傷がついてしまわないように、力を入れすぎないようにすることがポイントです。美しいツヤを出すために塗るときの力加減には十分に注意しましょう。
塗玉は牛乳で代用することもできます。パンのツヤは卵よりも劣りますが、卵アレルギーを持っている方や1個を使い切らない場合は、牛乳を使うのもひとつの方法です。
◎パン生地作りで卵を使うときの注意点
パン生地作りに卵を使うときに注意すべきことは、卵は分量が正確に測れないことです。水や牛乳などは、計量カップを使って分量を測れますが、卵については個数が目安になります。サイズごとで量も異なるため、大きいものと小さいものでは分量が変わってしまいます。パン作りに使用するときは卵のサイズに注意しながら、必要な分量に合うものを選びましょう。
◎まとめ
パン生地作りに栄養素の高い卵を使うことで焼き上がりにさまざまな効果をもたらします。卵黄や卵白が持つそれぞれの特徴や作用の違いに気をつけながら、パンの種類に合わせたおいしいパンを作りましょう。