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揚げる系のパンをじゅわっと香ばしく作るためのポイント

2023年4月18日
揚げパンやカレーパン、ドーナツなど、油で揚げて作るパンの魅力は外側のカリッとした食感と油が染み込んだパン生地によるジューシーな味わいでしょう。この記事では、パン生地を揚げる際に使う油の種類や、家庭で揚げる系のパンを作るときのポイントをご紹介します。
◎パン生地を揚げるときに使う油の種類
揚げるパンを作るのに欠かせないのが、パン生地を揚げる際に使う油です。新鮮な油を使うのはもちろんのこと、油の種類によってパンの風味が変わります。
 
◯サラダ油
原料は、大豆やとうもろこしなどの9種類が日本農林規格(JAS)によって定められています。精製度が高く低温でも固まらずクセが少ないことから、生でサラダに使えるというのが名前の由来です。サラダ油は揚げ物全般に向いています。

 
◯キャノーラ油
キャノーラとは「Canadian Oil Low Acid」を略して作られた造語であり、菜種油に使われるアブラナを改良して作られた品種を指します。加熱に強く、揚げ物に使うとカラッと仕上がり、クセが少ないので素材の味を邪魔しません。

◯オリーブオイル
「エクストラバージン」と「ピュア」の2種類がありますが、よく揚げ物に使われるのはピュアオリーブオイルの方です。食材のなかに浸透しにくく素早く熱を通すので、素揚げやフリッターに向いています。爽やかなオリーブの香りが楽しめます。
◯太白ごま油
「太白」は古代中国における金星のことであり「ほかの油よりも優れている」という意味が込められています。ごまを煎らずに生のまま絞って作るため、茶色いごま油に感じるようなごま特有の香りはなく、ごまの旨味が最大限に引き出された油です。加熱に強く、抗酸化成分を多く含むのが特徴で、天ぷらに向いています。

 
◯ショートニング
植物油や動物油を原料とする固形の油で、色は白く無味無臭です。「口当たりを軽くする」という意味の「shorten」が名称の由来です。熱を加えると液状になり、常温になると固形に戻る特徴があるので、ショートニングで揚げた食材はべたつかずにカラッとした仕上がりになります。酸化しにくく、繰り返し使っても焦げたり油臭くなったりしません。
家庭でパン生地を揚げる場合、コスト面やクセが少ないという特徴からサラダ油やキャノーラ油が多く使われますが、大量の油を繰り返し使う必要があるベーカリーなどではショートニングが使われることもあります。
 
◎揚げる系のパンを作るときのポイント
まずはパン生地を作る段階で、しっかりとグルテンを形成させましょう。材料を混ぜた直後は優しい力でこねますが、粉気がなくなった段階で手の付け根を使って台に擦り付けるようにしながらパン生地をしっかり捏ねていきます。こうすることで、しっかりとグルテンが形成されます。その後パン生地を台に叩きつけて、グルテンを強化させます。ひと通りパン生地をこねたら、グルテン膜ができているかを必ず確認しましょう。
 
一次発酵やベンチタイムでは、ラップをしたり濡れぶきんをかけたりしてパン生地が乾燥しないようにします。水分が飛んでパン生地が固くなってしまうと、具を包むのが大変になったり、途中で剥がれてしまう原因になります。一次発酵後、パン生地を分割してベンチタイムを取ったら成形の手順に移ります。カレーなどの具を包む場合は、ここでパン生地をきちんと閉じるのがポイントです。手のひらやめん棒で伸ばしたパン生地を利き手ではないほうの手に乗せたら、その真ん中に具を乗せます。パン生地が薄くなってしまうので具は押さずに、手のひらを少しずつ回しながら包んでいき、最後は指でつまんで閉じたら、閉じた面を下にして台の上に置きます。具の入れすぎや、中身の片寄りは閉じにくかったり、パン生地が割れたりする原因になります。また、閉じ目に具がついてしまうと上手に包めません。1度閉じ目に具がついてしまうと修正が難しいので、とくにカレーなどの油脂があるものや、水分の多い具は気をつけましょう。この後の二次発酵でも一次発酵やベンチタイムの際と同様、パン生地を乾燥させないように注意します。
 
揚げる際に余計な油をパン生地に吸わせないこともポイントです。衣やパン生地の表面が多くの油を吸うと、ベタつきや油っこさを感じるパンになってしまいます。ここまでにフワッと膨らんで隙間がたくさんあるパン生地が作れていたら、パン生地の表面のみが揚げ油に触れるので、余分な油を吸い込まずに済みます。揚げる際の油の温度が低くても、火が通るのに時間がかかりパン生地が多くの油を吸ってしまうので、油の温度は170〜190℃くらいにしましょう。適温にした後でも、一気に揚げようとしてパン生地を入れすぎると温度が下がってしまうことがあるので注意が必要です。油が高温すぎても、パン生地の外側だけが茶色くなって中身は生のままという状態になってしまいます。パン生地を揚げる際は裏表を返しながら中まで火を通し、最後に焦げ目をつけるようにすると、外側がカリカリで中身はフワフワのパンができあがります。パン生地が揚がったら、キッチンペーパーや網の上に乗せて油切りをしっかりしましょう。

◎パン生地を揚げる際に使われる機械
パン生地を揚げる機械に、フライヤーがあります。「揚げ物に抵抗がある」という方には、引火の危険がなく温度調節もしやすい卓上で使える家庭用の電気フライヤーがおすすめです。通常の電気フライヤーでは多くの油を使うことになります。そんなデメリットが解消できるのが「エアフライヤーオーブン」や「ノンフライヤーオーブン」と呼ばれる、高温の空気をファンによって高速で循環させることで調理を行う機械です。パン生地や衣に含まれる油を利用したり、油を吹きかけたりして調理するので、少ない油で揚げるパンが作れてしまいます。
 
揚げる系のパンを販売しているベーカリーでは、1度に多くの量を安定して揚げられる業務用のフライヤーを使用することが多いです。業務用フライヤーには、ガス式と電気式の2種類があります。ガスフライヤーは火力を強くできるので温度を上げるまでの時間が短いのが特徴ですが、電気式でも三相200ボルトの電気フライヤーならガスに匹敵するパワーを持っています。
 
製パン工場では、大型のフライヤーが使われます。大型のフライヤーにもガス式と電気式があり、さらにコンベア式のものや、油の劣化を防ぐために表面温度を一定に保つヒーターがついたもの、沈澱したカスを自動的に排出してきれいな油を保つ機能がついたものなど、さまざまな種類があります。

◎まとめ
揚げるという工程ひとつとっても、油を変えるだけで風味の違うパンが楽しめます。揚げる系のパンを作る際は、今回ご紹介したポイントを押さえながら自分好みのパンを追求してみてください。