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パン生地を上手に伸ばすコツとは?伸ばしても縮む原因と対処法

2023年5月30日
パン生地を伸ばす際に、縮んだり切れたりして困ったことはありませんか?パン生地をうまく伸ばすには、パン生地が持つ特性や、各工程で行う作業の意味を理解することがポイントです。この記事では、パン生地を伸ばせない原因や、上手に伸ばすコツをご紹介します。
◎パン生地づくりの工程のひとつ「伸ばし」
成形と呼ばれる、パンの形を整える工程のひとつに「伸ばし」があります。伸ばしには、棒状に伸ばすか、丸や四角といった平らに伸ばす2パターンがあります。ウインナーパンやバケットで使われるのは、棒状に伸ばす方法です。生地を折り畳む食パンや、ピザやクロワッサンなどの具材を乗せるパンでは平らに伸ばす方法が使われます。
 
パン生地の伸ばしは、見栄え以外にも、焼き上がりの食感やボリュームに影響を与えます。傷めずに伸ばされたパン生地にはツヤがあり、表面にほどよい張りがみられます。張りによって、膨らみのもととなる炭酸ガスを外に逃がしにくくなり、ふっくらとしたボリュームのパンに仕上がります。張りを保ったまま薄く伸ばされたパン生地は、適切に炭酸ガスが抜けている状態です。適切なガス抜きは気泡を整え、きめの整ったふんわりとした食感につながります。
 
パン生地を平らに伸ばす工程では、一般的に麺棒が使われます。パン工場や店舗では、クロワッサン生地などを薄く伸ばすシーターや、ガス抜きと伸ばしを行うモルダーなどの製パン機械が活用されています。

パン生地づくりの工程のひとつ「伸ばし」
◎パン生地がうまく伸びない原因
パン生地がうまく伸びない原因には、伸ばしの前の工程である「こね」や「ベンチタイム」が考えられます。
 
○こねが不十分
パン生地を伸ばすのがうまくいかない原因のひとつには、こね不足の可能性があります。こねが足りないと、パンの伸びに欠かせないグルテンを強化できません。強力粉のなかにはタンパク質である、粘性のグリアジンと弾性のグルテニンが多く含まれています。グルテンは、グリアジンとグルテニンが水に触れ、こねられることで発生する塊です。パン生地をこねなくてもグルテン自体はできあがりますが、強くするのに時間がかかるため、その後の発酵に影響を与えます。
 
発酵とはイーストの活性化のことで、糖を消費し、アルコールや有機酸、炭酸ガスなどを発生させる現象です。アルコールや有機酸にはグルテンを軟化させる効果があるため、パン生地が伸ばしやすくなります。炭酸ガスは、網目にたまってパン生地を膨らます仕組みのため、ガスを受け止められるようグルテンは強い網目構造になる必要があります。こねることでグルテンの連携が早くなり、短時間で強靭な網目状の組織にできます。こねの変化には6段階ありますが、5段階目のレットダウンステージ以降は弾力が減り、とろりとした状態です。通常、手ごねでこの段階にするのは困難なため、こね不足による失敗のほうが多いとされます。
 
こね不足かどうかは、パン生地を両手で引っ張るグルテンチェックで確かめられます。理想は、伸ばした際にグルテン膜という薄い膜が張り、うっすらと指が透ける状態です。穴が開いてしまう場合は、こね不足の可能性が高くなります。

パン生地がうまく伸びない原因
○ベンチタイム不足
パン生地を伸ばすのがうまくいかない原因の2つめが、ベンチタイム不足です。ベンチタイムとは、一次発酵やガス抜きが終わった生地を分割し、丸めて休ませる作業です。
 
グルテンは、力を加えると強まる「加工硬化」と、圧力がなくなると弱まる「構造緩和」の性質を持ちます。ベンチタイムをとると、加工硬化で強くなっていたグルテンの繋がりが弱まり、伸展性(伸びやすさ)が徐々に復活してきます。パン生地が縮むのは、グルテンの加工硬化にともなって、バネのような性質をもつグルテニンも同時に強くなるためです。パン生地づくりでは、こね(加工硬化)からの一次発酵(構造緩和)、分割と丸め(加工硬化)からのベンチタイム(構造緩和)、伸ばす(加工硬化)からの最終発酵(構造緩和)のように、加工硬化と構造緩和が繰り返されます。つまり、丸めと伸ばす工程の間にベンチタイムを挟まないのは、加工硬化を連続で行っている状態なのです。
 
ベンチタイムは、小さいパン生地で10〜15分、食パンなどの大きめのパン生地で20分程度とりましょう。時間はあくまで目安なので、大きさの変化や指で押した具合を確かめて、適宜追加してください。発酵するとひと回り大きくなるため、発酵前の写真を撮っておくとスムーズに比較できます。指で押した際に、くぼみが残る程度が最適なベンチタイムの目安です。作業中も生地の構造緩和は進むので、並べている生地の緩み具合のムラは避けられません。ベンチタイム後の並び順を覚えておき、分割と丸めを終えた順にスピーディーに伸ばすこともポイントです。

パン生地がうまく伸びない原因
 ◎パン生地を伸ばすときのコツ
パン生地を平面に伸ばす際には丸、楕円、四角の3パターンがあります。丸はピザパン、楕円はロール状にする食パンなどに使える伸ばし方です。四角は、シナモンロールなどのトッピングを加える菓子パンや、三角に切って巻くクロワッサン生地で使う伸ばし方です。丸や楕円、四角もそれぞれ、伸ばす前にやさしく麺棒で線をつけます。押さえ過ぎると、伸ばした際にアメーバのような歪んだ形になるので注意します。麺棒の転がし方のコツは、生地の中心から外側にかけることです。端から転がすと、生地が麺棒に巻き付きやすいので注意してください。手の一部分で転がすとムラになりやすいので、手のひら全体で転がしましょう。
 
丸や楕円に伸ばすには、まず麺棒でパン生地に一文字の目印を作ります。次に、中心から上下、左右、斜めへと麺棒を転がします。途中で止めずに、パン生地の端まで麺棒を当てましょう。生地が分厚くなってしまった部分は、中心から薄い方向に向かって丁寧に伸ばしていきます。慣れてきたら生地を半回転させながら麺棒を当てていくと、手早くきれいな形に伸ばせます。
 
四角に伸ばすには、まず麺棒で十字の目印をパン生地に作ります。次に、中心から上下、左右に麺棒を転がします。四角の場合は、上下左右ともに端まで転がしきらずに、1cm程度の隙間を残すのがポイントです。縦横の向きを変えて麺棒で伸ばすと、伸ばさず残していた部分が自然に端に押され、きれいな角ができていきます。おおよそのサイズまで伸ばしたあと、カードで周りや角を整えるとより綺麗な四角形になります。
 
どうしてもうまく伸ばせない際には、時間をおくか道具を変えてみる方法も有効です。ベンチタイム完了後でも、パン生地を少し置いてから伸ばしてみてください。重めの麺棒を使うと、麺棒自体の重さで自然にパン生地を伸ばすことが可能です。細かい凸凹があるガス抜き麺棒は、手粉なしでもパン生地がくっつきにくくなるので活用すると良いでしょう。

パン生地を伸ばすときのコツ
◎まとめ
伸ばしは、焼いたあとのパンのボリュームや食感にも影響を与える大切な工程です。パン生地の特性や、各工程で行う意味を理解したうえで、しっかりと伸ばしましょう。また繰り返すことで上達するため、麺棒の使い方や力加減を意識しながらチャレンジしてみてください。

パン生地を上手に伸ばすコツとは?伸ばしても縮む原因と対処法