ブログ

ライ麦と小麦の違いは何?パン生地に使うメリットや特徴

2023年9月5日
かつては、白いパンを食べる余裕のない家庭が食べるものとされていたライ麦パンですが、近年では健康志向の高い方を中心として人気を集めています。この記事では、ライ麦の基礎知識から、ライ麦をパン生地に使った場合の特徴やメリットについてご紹介します。
◎ライ麦と小麦の違い
歴史を遡ると、もともとライ麦は、小麦畑や大麦畑に生えていた雑草が栽培化されたものだと考えられています。ライ麦と小麦は、どちらも同じくイネ科で越年性の一年草なのもあり、よく似ています。しかし、米ととうもろこしに並ぶ世界三代穀物である小麦と、ライ麦では世界での生産量に大きな差があります。アメリカ農務省のデータによると、小麦の2022年の生産量は約7億8,000万トンです。一方で、ライ麦の生産量は約1,200万トンしかありません。
 
アメリカ、カナダ、オーストラリアという小麦の主な生産国に対して、ライ麦の主な生産国はドイツ、ポーランド、ロシアであることから、それぞれ生育に適した環境も異なることがわかります。小麦は日当たりがよく降水の少ない平原地帯でよく育ちますが、ライ麦は小麦の栽培に適さない酸性の土壌や、寒冷な環境でも栽培が可能です。小麦が育ちにくいドイツなどの北欧の国では、現在でもライ麦パンが一般的な主食として親しまれています。
 
ライ麦は細かく製粉してライ麦粉としてパンに使うほかに、粒そのものを料理の材料としたり、ビールの原料として使うこともあります。また、飼料や緑肥のために青刈り作物として栽培する場合もあります。

ライ麦と小麦の違い
◎ライ麦パンの特徴
ライ麦パンの見た目の特徴は、ライ麦粉が浅黒い灰色のため、パン生地もグレーのような茶色になることがあげられます。また、ライ麦パンならではの特徴といえば、素朴な味わいと独特な酸味ですが、それはライ麦を使ったパン生地作りに欠かせないサワー種によるものです。乳酸発酵による香りや味が、ライ麦パン特有の魅力を作り出しているのです。
 
サワー種とは、乳酸菌や酵母菌などの何種類もの微生物が共存した伝統的なパン種のことをいいます。微生物は水と混ざると活性化して酸や炭酸ガスを発生し、乳酸を生成します。小麦のパン生地はイースト菌が生成するガスやアルコールにより膨らみますが、ライ麦を使ったパン生地を膨らませるのはサワー種の役目になります。ただし、膨らませるといっても小麦のパン生地ほどは膨らみません。そのため、パン生地は密度が高く目が詰まったものになるので、ライ麦パンはずっしりと重みのある固めのパンとなります。パン生地の密度が高い分、水分が抜けにくくなって日持ちするので、長く楽しめるのもライ麦パンの特徴といえるでしょう。
ライ麦パンの特徴
◎パン生地にライ麦を使うメリット
ライ麦は腸内環境を整えてくれる食物繊維や、体をスムーズに動かすために必要なビタミンが豊富です。カリウムやマグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガンといったミネラルも多く含みます。さらには、ライ麦はGI値が低いというメリットもあります。GI値が低い食品は、糖の吸収を緩やかにし、急激な血糖値の上昇を抑えるため、肥満や糖尿病の予防に役立つとされています。また、ライ麦でできたパン生地はずっしりと重く、咀嚼回数を自然に増やすため、満腹中枢を刺激して食欲を抑える効果が期待できます。そのため、食事にライ麦パンを取り入れることは、ダイエットをしている方にも適した選択となります。
 
東京工科大学の研究グループが行った2017年の発表によれば、ライ麦を食べることで健康寿命が伸びる可能性があることもわかっています。ライ麦に含まれるアルキルレゾルシノールという成分が、長寿遺伝子と呼ばれるサーチュイン遺伝子を活性化させると、老化やメタボリックシンドロームの抑制につながるとされています。(参考:東京工科大学 https://www.teu.ac.jp/information/2017.html?id=101)
 
気をつけたいのは、ライ麦パンをグルテンフリーだと勘違いしてしまうことです。ライ麦パンは、小麦粉とブレンドされている場合が多いため、たとえライ麦100%だとしても、ライ麦に含まれるセカリンという成分がアレルギー反応を引き起こすことがあります。とはいえ、パン生地に含まれるアレルギー成分は小麦が作り出すグルテンに比べるとはるかに少量です。なるべくグルテンを控えたい方には、小麦を使ったパンよりもライ麦パンのほうが適しています。

パン生地にライ麦を使うメリット
◎ライ麦を使ったパン生地づくり
ライ麦を使ってパン生地を作る場合、手順は小麦を使った一般的なパンを作るときと同様です。ライ麦を使ったパン生地は粘り気がありベタベタするため、小麦を使ったパン生地に慣れていると、扱いにくく感じるかもしれません。ライ麦を入れるとパン生地がベタベタするのは、ライ麦に多く含まれているペントザーネ(ペントザン)というでんぷんが関係します。特徴のところで触れたように、ライ麦で作るパン生地は乳酸発酵により膨らみます。ライ麦はグルテンを形成しないため、このとき生成されたガスを包み込むのが、水と混ざって粘着質になったペントザーネです。ただし、ガスの保持力はあまり強くありません。
 
ライ麦パンは、ライ麦粉だけではパン生地が膨らみにくいので、小麦粉を混ぜて作られる場合もよくあります。初めてライ麦粉を使ってパンを作るなら、ライ麦粉10%、小麦粉90%から始めて、回数を重ねるごとにライ麦粉の割合を増やしながら自分好みの味を見つけるのが良いでしょう。小麦粉の割合が多いほどふんわりとした食感に、反対にライ麦の割合が多いほど酸味の強いパンになります。ライ麦パンは、小麦粉との比率によって、呼び方が変わります。たとえば、小麦が90%以上ならヴァイツェンブロート、50%以上ならヴァイツェンミッシュブロート、ライ麦と小麦粉が同じ割合ならミッシュブロート、ライ麦が50%以上ならロッゲンミッシュブロート、90%以上ならロッゲンブロートとなります。なお「ロッゲン」が「ライ麦」で「ヴァイツェン」が「白」を意味します。
 
仕上がったライ麦パンは、さまざまな食品と組み合わせて楽しめます。酸味が気になる方は、パン生地にバターやマヨネーズ、レバーペーストを塗ると和らげられます。ほかには、ワインと一緒にチーズや油っぽい肉料理と合わせるのもいいですし、ジャムやハチミツ、ドライフルーツなどの甘いものを合わせるのも良いでしょう。

ライ麦を使ったパン生地づくり
◎まとめ
ライ麦パンは、小麦のパンにはない風味や食感が魅力です。栄養価も高く健康にも役立つので、普段の食事に取り入れてみてはいかがでしょうか。ライ麦粉を使ったパンを作る際には、小麦粉のパン生地との違いを楽しんでくださいね。

ライ麦と小麦の違いは何?パン生地に使うメリットや特徴