パンを焼いた後は、冷却の工程が重要です。冷却することでパンが焼き立てよりもおいしくなり、またおいしさを維持したまま保存が可能になります。この記事では、パンの冷却や冷却後に保存するタイミング、工場で使われる製パン機械クーリングコンベアについてご紹介します。
◎パンの焼成後に必要な冷却
冷却は「クーリング」ともいい、焼成後のパンを冷ます工程になります。パンの食べ頃は焼き立てだと思われがちですが、実はオーブンから出した直後の熱々のパンには多くの水分が含まれており、食べても粘土のような食感を感じることがあります。焼成後はきちんと冷却することで、余計な水分が水蒸気となって外に逃げていき、パンがふんわりと仕上がります。水分と一緒にアルコールも抜けていくので、特有の発酵臭がなくなり香りも安定したものになります。パンの種類にもよりますが、パンは焼き立てよりも、冷却してからの方が、本来の風味や食感を感じることができるのです。
焼いてオーブンから出した後のパンはとても熱く、多くの蒸気が出ています。まだパンが冷めきっていないうちに袋などに入れると、袋の中と外の温度差によって結露が生じて袋に水滴がついてしまいます。パン作りにおいては、袋に水滴がついた状態を「汗をかく」と表現することがあります。汗をかいたパンは、つぶれてベチャベチャとした食感になったり、カビが発生する原因になったりといいことがありません。焼成後の高温状態で水分を多く含んだパンは、とてもやわらかいためスライスがしにくく、たとえスライスできたとしても、カット面がボソボソになってしまいます。こういった理由からも、パンは焼成後、パンの中心温度が室温と同じくらいになるまで下げる工程が必要なのです。
冷却といっても、パンを冷たい場所に移す必要はありません。ただし、パンが天板に乗ったままではパンの底から蒸気が逃げられずに蒸れてしまうので、パンを網の上などに移動させます。そして、クーラーなどで冷やそうとしてもパンが縮んでしまう恐れがあるため、ゆっくりと時間をかけて自然に熱が飛ぶのを待つようにします。
◎冷却後にパンを保存するタイミング
冷却の時間が長くなりすぎると、パンは乾燥して水分がなくなり、パサパサになってしまいます。パンが空気に触れ続けている状態は衛生的にも好ましくないので、冷却後にパンを放置することがないようにしましょう。冷却にかかる時間は、ロールパンでおよそ20分、食パンでは1〜2時間かかるという具合に、パンの種類によって異なります。パンを触って熱さを感じなければ、粗熱が取れたサインです。冷却後にパンをすぐに食べないということであれば、袋などに入れて保存します。ベーカリーなどで、冷却がすんでいない焼きたてのパンを販売する場合は、袋の口を開けたままお客さまに渡すことがあります。しかし、それはパンが汗をかかないようにするためなので、パンを保存するときは、袋や保存容器は密閉するのが基本です。
冷却して袋に入れたパンは、翌日までに食べる場合は直射日光を避けて常温で保存しておけば、おいしく食べられます。ただし、野菜やフルーツ、生クリームを使ったパンは傷みやすいため、冷蔵庫に入れた方がよいでしょう。翌日以降もパンを保存したい場合は、冷凍保存が適しています。しかし、冷蔵庫や冷凍庫での保存は、パンが乾燥したり食感などが変わったりすることがあるので気をつけなければなりません。とくに野菜やフルーツを使ったパンは、解凍するときに水分が出て本来の食感にならない可能性が高いため、冷凍は避けるのが無難です。パンを冷蔵や冷凍する場合は、なるべく空気に触れないようにラップで包んでから、ジップロックのような密封できる袋に入れるようにすると、乾燥を防げます。
◎工場でパンを冷却する際に使われる製パン機械
多くのベーカリーでは、焼成後のパンをラックに並べて冷却する方法を採用しています。一方で、パンを大量に生産するパン工場で冷却する際は、クーリングコンベアという製パン機械が使われています。クーリングコンベアは、名前に「コンベア」とつくように、パンの冷却だけでなく、焼成後のパンを加工や包装する工程まで一定のスピードで運ぶ役割も果たします。焼成を終えたパンは、クーリングコンベアで運搬されている間に冷却され、決められた温度まで下がるようになっています。
クーリングコンベアには、いくつかの種類があります。レイアウトが自在に組めるエンドレス方式のクーリングコンベアは、工場内のスペースを有効に使えるように、天井に近いデッドスペースに配置して使われることが多いです。ほかには、らせん状にコンベアがつながっていて、省スペースな設置が可能なスパイラルコンベアや、ドラムがない分、中に入って清掃などがしやすいドラムレスコンベアといった種類があります。いずれも、冷却は清潔な場所で行うことが重要なので、クーリングコンベアは衛生面に重点を置いた場所に設置されます。
また、クーリングコンベア以外にも、パンを冷却する製パン機械として真空冷却機があります。真空冷却機は、装置内の圧力を低下させてパンから水分を蒸発させることで、その際の気加熱を利用して急速にパンを冷やす仕組みです。自然に冷却する場合と比べて、パンが凹みにくく食感がよくなること、急速に温度を下げることで有害微生物や食中毒が発生する可能性が低くなることがメリットとしてあげられます。スペースを取らないことや、冷却時間の短縮による生産性向上も見込めます。真空冷却機による冷却は、海外では広く認知されています。これまで日本のパン工場では、送風や自然冷却による冷却がほとんどでしたが、近年では国内でも真空冷却機が普及しはじめています。
◎まとめ
焼き立てのパンをおいしく食べるためには、きちんと冷却することが大切です。KOKIは、成型ライン専門メーカーとして、販売から開発、設計、製造、保守までの一連の業務を行っています。製パン機械に関するお悩みやご相談は、当社までお気軽にお問合せください。