世界でもっとも面積が大きい国としても知られるロシア。パンは、ロシアでは主食として食べられているのをご存知でしょうか?この記事では、ロシアのパンにはどのような特徴や種類があるのか、また作り方のポイントについてご紹介します。
◎ロシアのパンの特徴
ロシアは、国土のほとんどが寒冷地のため小麦の栽培には適さず、そのため黒パンと呼ばれるライ麦パンが主に食べられています。しかし、南部では小麦の栽培が可能なことから、白パンと呼ばれる小麦を使ったパンも広く親しまれています。パンを主食とするロシアでは、結婚式やお祭りなどの際に花や木の枝などの美しい模様を施した、カラヴァイという丸パンが欠かせません。
ロシアには、大切な客人をパンと塩で迎える風習があります。カラヴァイはその風習に倣い、特別な儀式の際に塩と一緒に食べられているパンです。カラヴァイはサイズが大きいほど幸せを呼ぶとされており、とくに結婚式では大きなカラヴァイが切り分けられ、招待客たちにウエディングケーキのように振る舞われるそうです。カラヴァイは既婚女性が焼くものとされ、結婚式においては新郎の母が式前夜にカラヴァイを焼き、新郎新婦がそれにかぶりつくという習慣があります。カラヴァイは、結婚式だけでなくお祭りや特別な来客時など、さまざまなシーンで食べられています。
このように、パンがその文化に深く根付いているロシアですが、パンのなかでも日本でもっとも親しまれているのがピロシキです。ピロシキは、パン生地のなかに肉や魚などの具材を包んで、油で揚げたり焼いたりして作る家庭料理です。ロシアのほか、ウクライナやベラルーシなどの東ヨーロッパを中心に食べられています。ピロシキは歴史あるパンで、もともとはロシア皇帝も食べていたとされるピロギという料理に由来しています。ピロギは、天板に敷き詰めたパン生地に具材を挟んで焼いたもので、約40センチ四方あるかなり大きめのパン。ピロシキは、巨大なピロギを食べやすいよう小さく改良したものです。
日本では油で揚げたピロシキが一般的とされていますが、本場ロシアではピロシキはオーブンで焼いたものが主流です。また、ピロシキは中国を経由して日本に伝わったため、日本で売られているピロシキの多くは具材に中華風の味付けがされています。日本のピロシキには春雨や椎茸を使用したものが多く、本場ロシアのピロシキには豚や牛などのひき肉や焼き魚のほぐし身を使用しているという違いがあります。ピロシキに使う具材には決まったルールがなく、それぞれの国や家庭で異なるため、地域によってさまざまなピロシキを楽しめます。
◎代表的なロシアのパンの種類
ロシアの代表的な黒パンといえば、ボロジンスキーです。ロシアでもとくに人気のあるライ麦パンで、名前はボロジノ村にちなんでいます。ボロジンスキーの最大の特徴は、パンの表面がコリアンダーの種で覆われていることによる独特な香りです。このスパイスの香りは、ロシアの家庭料理を思い起こさせ、地元の人々にとっては懐かしい味わいといえます。ライ麦特有の酸味とほのかな甘みが絶妙に調和し、薄くスライスしてバターを塗り、チーズやサーモンと一緒に楽しむのが定番です。とくにサワークリームやディルと組み合わせると、さらにロシアらしい味わいが広がります。
ナレズノイは、ロシアで非常にポピュラーな白パンです。棒状の形が特徴的で、表面に大きく刻み目が入っているため、見た目にもインパクトがあります。このパンは小麦を主原料としており、やわらかい食感とふんわりとした風味が特徴です。朝食や軽食としてサンドイッチに使われることが多く、とくに新鮮な野菜やスモークハム、チーズを挟んだシンプルなサンドイッチが好まれます。ナレズノイは、日常的に食べられるパンとして、どの家庭でも馴染みのある存在です。
ロシアを代表するピロシキは、世界的にも知られる名物です。ピロシキはパン生地やパイ生地を使って具材を包み、オーブンで焼いたり油で揚げたりして作られます。その具材の種類は多く、肉や魚、キャベツ、ジャガイモ、卵、チーズ、ご飯、なかには甘いジャムやベリー類など、家庭ごとにレシピがあります。ピロシキはパーティーやピクニック、日常のおやつとしても親しまれており、ロシアの食卓には欠かせない一品です。また、ピロシキの中身は季節や地域によっても変わるため、各地を訪れる際にはその土地ならではのピロシキを楽しむのも魅力のひとつです。
◎ロシアのパン作りのポイント
アレンジの幅が広く、日本でも広く愛されているピロシキの主な材料は、強力粉、砂糖、塩、ドライイースト、牛乳、バターです。具材は、牛豚合いびき肉、玉ねぎ、ゆで卵、ウスターソース、塩、こしょう、ドライパセリなどが使われます。お好みで、焼き魚やジャム、中華風の春雨や椎茸など、さまざまな具材を包んで楽しむことができます。生地作りは、まずボウルにバター以外の材料を入れて、粉っぽさがなくなるまでよく混ぜ合わせます。材料がしっかり混ざったらこね台に生地を出し、常温に戻しておいたバターを加えてよくこねます。生地に弾力が出て、表面がなめらかになるまでこねたらボウルに戻し、ラップをして常温で30分ほど発酵させてください。
生地を発酵させている間に、包む具材を作っておきます。フライパンに薄く油をひき、みじん切りにした玉ねぎを炒めます。玉ねぎがしんなりしてきたら、合いびき肉を入れてさらに炒めましょう。肉の色が変わるまで炒めたら、ウスターソース、塩、こしょう、ドライパセリを入れてよく混ぜ合わせます。炒めた具材に調味料がなじんだら火を止めて、ゆで卵をつぶしながら混ぜたら完成です。完成した具材は、しっかりと粗熱をとっておきましょう。発酵させた生地が2倍ほどに膨らんだら、4等分にしてきれいに丸めます。閉じ目を下にして濡れ布巾をかけ、10分ほど休ませましょう。
休ませた生地を楕円形になるように伸ばし、生地の半分に具材をのせて折りたたみます。油で揚げているあいだに具材があふれないよう、閉じ目はしっかりと密着させるのがポイントです。フォークの先を使って跡がつくくらいの力で閉じ目を押さえると、より生地同士が密着します。具材を包んだら、生地にラップをかけて15分ほど発酵させましょう。160℃に熱した油に具材を包んだ生地を投入し、全体がきつね色になるまで揚げたら完成です。高温の油で揚げると表面が焦げやすいので、低温でじっくりと揚げましょう。作ったピロシキは、ぜひ揚げたてを味わってみてください。
◎まとめ
ロシアでは、パンは歴史ある伝統的な食べ物であり、主食やお祝い事に欠かせないものとして人々に愛されています。日本でも親しみのあるピロシキは、生地や具材のアレンジが豊富でさまざまな味が楽しめるパンです。オリジナルのレシピで楽しめるロシアのパンを、ぜひ家庭でも味わってみてはいかがでしょうか。
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