秋は気温の変化が激しい季節で、それゆえ食材も豊富に手に入れやすくなります。しかしパン作りにおいて、季節による温度差がパン生地に与える影響は大きいものです。この記事では、秋のパン生地作りに関する温度や製法のポイントをご紹介します。
◎秋のパン生地作りの注意点
日本の秋は、暦上9月から11月です。この時期は気温と湿度の変動が激しく、朝晩だけでなく日々の変化にも表れます。パンの美味しさを保つのに重要なポイントは、パン生地と環境の温度が適正であることです。同じ秋でも気温と湿度に大きな差があり、パン生地を扱う際は慎重さが必要です。9月上旬の最高気温は29℃で、下旬には25℃となります。10月は20~23℃、11月下旬には15℃と、一気に冷え込みます。日ごとの経過だけでなく、朝晩の気温差も7℃あり、温度変化によってパン生地を一定に保つのは難しい状況です。しかし材料や水を環境に合わせた温度に調整できれば、夏よりもパン生地作りをスムーズに進められるのです。
気温が高いときは、夏と同様にパン生地の発酵が進みすぎないよう注意します。冷蔵庫でパン生地自体やバターなどを冷やしながら、発酵の状態を見極めてください。涼しくなってきたら、冷やしていた材料を常温に移行させていく必要があります。パン生地は、細かい温度変化によって味や食感の違いを生むため注意が必要です。
パン作りで重要なイーストの発酵は、温度28~40℃・湿度70~80%が最適な環境です。最適温度を目安に、パン生地を捏ね上げていきます。温度だけではなく、秋は乾燥の季節でもある点に留意してください。パン生地の水分は、9月と11月で調整量が異なります。相対湿度が、9月80%、10月65~75%、11月65~70%と変化していくためです。9月は基本の水分量よりも10mlほど減らしてパン生地を作ります。10月中旬以降の乾燥してきた時期になったら、水分量を基本に戻しましょう。
◎秋のパン生地作りで意識したい仕込み水温
秋のパン作りで生地の捏ね上げ温度を一定にするためには、仕込み水温を意識することが大切です。気温の変化によって、小麦粉や水、副材料の温度も変わります。そのままの水道水を使うと、捏ね上げたときのパン生地は適正な温度になりません。パン作りでは生地の温度が発酵に影響をおよぼし、味わいや膨らみを変えてしまうのです。パンの質を維持するために細かい温度調整ができるのは、水です。仕込み水温を意識すれば、開始時のパン生地温度を管理できます。パン生地は、捏ね上げる作業で生まれる熱の温度によっても左右されます。捏ねる前に材料や水の温度を測定しておくことが重要です。パン工場では、パン生地の温度を一定に保てるよう製パン機械を活用しています。
パン生地を捏ね上げたときの目標温度は、種類ごとに異なります。ソフト系は27℃、ハード系は25℃を目安としますが、製法によって異なり注意が必要です。捏ね上げたときの温度がわかるように、スタート時の状態確認が必須です。始める前に、粉と水の温度を測定します。パン作りの作業工程では、捏ねたときに発生する摩擦熱が加わります。状況によって相違はありますが、手ごねの場合には摩擦で5℃上昇すると考えておきましょう。
捏ねる前の粉と水の温度を足して2で割ると、パン生地のスタート温度がわかります。スタートの状態に摩擦で加わる上昇温度を足すと、パン生地を捏ね上げたときの温度になります。計算式は【(捏ね上げ温度-上昇温度)×2=合計温度】、【合計温度-粉の温度=仕込み水の温度】です。同じ秋でも11月になると水の温度が低くなります。水が冷たいまま作るとパン生地が冷えてしまい発酵に時間がかかるため、適正な仕込み水温を計算し調整してください。
◎秋に作りたい具材を使用したパン生地のポイント
秋は実りの季節となり、食材が豊富です。さつまいもや栗といった秋の味覚は、パンと調和してあでやかさを与えてくれます。ベーカリーでも、デニッシュなどのリッチな味わいを楽しめるパンが並びます。また涼しくなると、食欲が増してパンを食べる人も多くなるでしょう。作る側としては、パン生地の温度管理がしやすくなります。バターをたっぷりと使用したデニッシュやクリームを使ったパンも、抵抗なく作れます。ほかにもおかずパンなど、パン作りの幅が一気に広がるのです。秋は作る側と食べる側の双方にとって、最適な季節となっています。
パンのなかでも、秋の食材を具材として混ぜ込んだりのせたりするタイプは人気です。秋の味覚であるさつまいもをパン生地に混ぜ込む場合には、タイミングが大切です。潰れやすい素材は、成形時に入れます。混ぜ込むタイミングに間違いはなく、考慮する点は味や出来上がりの見た目となります。素材のやわらかさや熱耐性、水分含有量を考えて、パン生地に混ぜ込むタイミングを決めましょう。タイミングだけではなく、水分量や全体のバランスも大切です。水っぽい素材を使用するときは、下準備として水分が飛ぶように煮詰め、パン生地の水分量を通常より少なくします。パン生地に対する具材のバランスがとれていないと、グルテンがつながりにくくなり発酵に時間を要するため、量の調整が必要です。
具材を混ぜ込むときは、パン生地を平らにならします。上に具材を均等に並べて、端から優しく巻いていきます。水分や糖分が多い素材では、圧力をかけると潰れるため注意が必要です。パン生地を優しい力で伸ばして捏ね、具材が全体に行き渡るよう丸めていきましょう。具材のない生地の部分に、張りのある状態が目安です。具材をのせたい場合には、成形時がおすすめです。ただし、成形中にこぼれたり見栄えに影響したりするのであれば、二次発酵時にのせてください。具材を使用して作るパン生地は、基本の形よりも工程に細かい調整が求められます。見た目や味わいに華やかさを演出してくれる分、秋のパン作りを楽しめるのです。
◎まとめ
パンを美味しく作るには、秋の気温や湿度の変動に合わせて、パン生地の環境を整えることが重要です。KOKIでは、パンの品質を保つために欠かせない製パン機械を開発・販売しています。製パン機械を検討している方は、お気軽にお問い合わせください。