二次発酵は焼成前にパン生地を膨らませる工程のことで、最終発酵やホイロとも言い、焼き上がり後のパンの形や風味、食感を左右します。この記事では、二次発酵の役割や方法について詳しく解説します。
◎パン生地作りにおける二次発酵の役割
一次発酵で発生したパン生地内のガスは、その後の成形までの過程で多くが抜けてしまいます。そこで、成形後のしまったパン生地を再度発酵させてゆるめ、焼いているときに最大限に膨らむようにするのが二次発酵の目的です。二次発酵でパン生地の中にあるイーストが糖分を分解すると、アルコールやそのほかの香味成分が生成され、風味のよいパンになります。
二次発酵では、パン生地の膨らませ具合をピークの8割から9割の状態までにとどめておきます。二次発酵が終わった段階でパン生地に膨らむ余裕を持たせて焼成することで、口当たりの良いふっくらとしたパンが焼きあがるのです。
◎二次発酵に最適な環境と見極めのポイント
成形後のパン生地を天板に並べたら、適切な環境下のもとで二次発酵させます。二次発酵に必要なのは、温度が30〜40℃で湿度が80%くらいの高温多湿な環境です。天板にパン生地を並べる際は、発酵後のパン生地が1.5〜2倍になることを加味しながら並べます。
イーストは37〜38℃でもっとも活発になるので、夏場は室温でも発酵します。パン生地の量が多いときは、冷蔵庫で寝かせておけば発酵を止めることが可能です。室温で二次発酵させる場合には、ラップやふきんをふんわりと被せて乾燥を防ぎます。パン生地にラップなどが付着すると、剥がす際にパン生地を傷めてしまうことがあるので、高さのあるコップを使って直接ラップなどがくっつかないようにするのもよいでしょう。
オーブンの発酵機能を使えば、誰でも比較的簡単に二次発酵に最適な環境を作ることができます。ただし、室温によってはオーブンを予熱している間も発酵が進むので、その時間を考慮する必要があります。また、オーブンの庫内は乾燥しやすいため、スチーム機能がついていない機種を使う場合は、小さな容器などに入れた湯をパン生地と一緒に入れて乾燥を防ぐようにします。
発酵機能がついていないオーブンでも、工夫すれば二次発酵のための環境が作れます。事前にオーブンの庫内を温めておき、スイッチを切って庫内が40℃になった段階でパン生地をボウルやどんぶりなどに入れた湯と一緒に入れたら、あとはパン生地が膨らむのを待つだけです。扉の開け閉めを何度もしてしまうと、温度が下がってしまうので注意が必要です。
二次発酵に必要なのは高温多湿の密閉された空間なので、大きなビニール袋やプラスチックの衣装ケース、発泡スチロールの箱と湯を使うという方法もあります。特に発泡スチロールの箱は断熱性が高く、保湿力があるので発酵に適しています。ただしこれらの方法は、室温が低いとなかなか温度が上がらないので、寒い時期には向いていません。
二次発酵が終了したかどうかは、パン生地の膨らみ具合で判断します。二次発酵にかかる時間は季節や作るパンの種類によっても変わるので、レシピに載っている時間はあくまでも目安にしてください。パン生地が成形後の状態から1.5〜2倍ほどの大きさに膨らんでいたら、二次発酵が成功したといえます。フィンガーチェックをする場合は、パン生地の表面の目立たないところを指で軽く押して、跡が少し残るかゆっくり戻るくらいにハリがあるかどうかを確認します。跡が完全に戻ってしまうのは発酵不足、しっかり残る場合は過発酵のサインです。二次発酵後のパン生地はとてもデリケートなので、この後の仕上げなど焼成前の作業では慎重に扱いましょう。
◎二次発酵がうまくいかない原因と対処法
二次発酵はパンの形や食感の決め手になる工程です。二次発酵が足りなかったり、しすぎたりすると、当然パンの仕上がりは適正に二次発酵できた場合と比べて変わってきます。
二次発酵が足りないと、パン生地の伸縮性が足りないまま焼くことになります。焼いているときに発生するガスにパン生地が耐えられずに割けてしまうので、パンは膨らみません。結果、パンの表面には割れ目が見られたり、焼き色にムラができたりします。パン生地のなかのガスが少ないと火通りが悪くなるので、焼き色は白っぽくなります。仕上がったパンは、きめがつまってかたく、ボソボソとした食感になります。
一方で、二次発酵しすぎるとパン生地の表面には気泡が浮いてきて、でこぼこした見た目になります。膨らみのピークをすぎてしまったパン生地は焼く前にしぼんでしまうので、焼いてもあまり膨らみません。たとえ焼き上がりがふっくらしているように見えたとしても、すぐにしぼんでしまいます。また、イーストが働きすぎて炭酸ガスとアルコールを過剰に発生させるので、アルコール臭が強く、風味や旨味の悪いパンになります。パン生地には大きく粗い気泡ができるので、パサパサとした食感になります。
二次発酵しすぎたことに気付いても、そのあとは焼成するしかありません。パサパサのパンには液体がよく染み込むので、卵液を染み込ませてフレンチトーストにしたり、ラスクやパン粉にすると無駄にせずにすみます。パン生地があまりに弱ってヨボヨボになってしまったら、平くしてピザにしてしまうというのもひとつの手です。
◎製パン工場で使われているプルファー
家庭で幅広いパンを安定して定期的に作りたい人には、発酵器がおすすめです。発酵器とは、高温多湿を維持できる温蔵庫のようなものです。オーブンの発酵機能を使うと、パン生地を焼くための予熱が遅れたり発酵中はオーブンでバターを溶かせないといった問題が発生しますが、発酵器を導入すれば解消されます。
ベーカリーや製パン工場では、プルファーやホイロと呼ばれる製パン機械を使います。とくに最終発酵に使うプルファーはファイナルプルファーと呼ばれます。ベーカリーでは、大型の冷蔵庫のような見た目で、いくつもの天板が差し込めるようになっている中型のプルファーが使われることが多いです。工場で使うような大型のプルファーの種類はさまざまで、天板を何段も乗せたラックが入る大きな部屋のようなものから、二次発酵に最適な環境下でコンベアによってパン生地が移動するなど、製造ラインに組み込んでいる製パン工場もあります。
◎まとめ
ふんわりとして風味のいいパンを作るためには、二次発酵の工程が重要です。季節や温度に合わせた最適な環境づくりと、パン生地の膨らみ具合の見極めをぜひマスターしてくださいね。