パン作りで1番はじめに行う工程は、材料を混ぜてこねるミキシングという作業です。ミキシングは安定したパン生地を作るために大切な工程ですが、家庭やベーカリー、パン工場といったパン作りを行う場所や製造する量、作るパンの種類などによって、製法や使用する機械が異なります。
この記事では、パン工場など大量生産を行う現場のミキシングで使用する、横型ミキサーという製パンの製造機械についてご紹介します。
◎パン工場で使用する横型ミキサー
生産ラインなどを使って大量生産を行う製パンの現場では、ほとんどの工程で専用の製造機械が使用されています。パン生地をこねるミキシングを行う機械は、ミキサーと呼ばれており、縦型ミキサーやスパイラルミキサー、横型ミキサーなど、さまざまな種類があります。ミキサーの中でも大型の機械が横型ミキサーで、中規模以上のパン工場では横型ミキサーが使用されていることが多いです。
横型ミキサーは、パン生地を作るための機械ですが、パン生地作りには、基本的にストレート法と中種法と言われる2つの製法があります。ストレート法とは、使用する材料すべてを1度に混ぜ合わせて生地をつくる製法で、中種法とは、材料を2回に分けて混ぜミキシングを行う製法です。
中種法では、まず全体で使用する量の50%以上の小麦粉と水、酵母を混ぜ合わせて発酵させ、中種と言われる生地を作ります。そして発酵した中種に、残りの小麦粉と副材料と言われる砂糖やバターなどを混ぜて本ごねを行い、さらに発酵させてパン生地を完成させます。中種法で作ったパン生地は、こねる作業を2回行うことでパン生地のグルテンが強化されるため、その後の工程や機械による作業によっても傷みにくい生地になり、焼き上がりもふっくらとボリュームのあるパンができあがります。また2度発酵する時間を取ることによって小麦粉が水分をよく吸収し、きめが細かく柔らかい、しっとりしたくちどけのパンになります。さらに、保水性が増すためにパンが硬くなりにくく日持ちしやすくなるといった特徴もあることから、中種法を使うとパン生地の出来上がりが一定になります。製品の品質を安定させやすくなるため、パン工場など大量生産を行う現場では、中種法でパン生地が作られることが多いです。
そのため多くのパン工場では、まず中種を作るために横型ミキサーを使用してミキシングを行い、こねた生地をドゥボックスと呼ばれる大きなボックスに移動し、湿度と温度を管理した発酵室でドゥボックスごと保管します。一定の時間発酵させて中種が完成したら、ドゥボックスから横型ミキサーへ中種を投入し、他の材料を合わせてミキシング作業を行います。ミキシングが完了したパン生地は、横型ミキサーからドゥボックスへもう1度移され、生地の分割を行うための分割機という機械へ移動し、丸めや成形などの工程へ進みます。
◎横型ミキサーの仕組み
横型ミキサーは大きな箱型の機械で、そのなかにミキシング用の大きなボウルになる部分があり、ボウルのなかには生地を捏ねるためのバーが横向きに設置されています。上部から小麦粉などの材料を投入できますが、ボウルになる部分の側面が開いていて、そこからも材料を投入したり、こねた生地を排出したりすることができます。ミキサーのなかに材料を投入したあとは、バーが回転してパン生地をこねる仕組みになっています。
横型ミキサーの生地をこねるためのバーは、アジテーターと呼ばれており、Y字アジテーターという3本のバーが設置されているミキサーやバーが2本のミキサー、またZ型のアジテーターが設置されているミキサーなど、アジテーターの仕様はメーカーによってさまざまです。またアジテーターとボウル側面のすき間のことをクリアランスと言い、クリアランスの幅を調整できるミキサーも多くあります。調整できるミキサーであれば、パン生地の吸水率を上げたるためにクリアランスを狭くしたり、材料が混ざりにくい場合に広くしたりといった調整が可能です。
また柔らかい生地をこねる場合はクリアランスを狭くし、硬めの生地であれば広げて使用するなど、パン生地の硬さに合わせたミキシングをすることもできます。パンに加える材料の種類や量などだけでなく、ミキシングの速度や時間、ミキシングの際に使用する横型ミキサーのアジテーターの仕様、クリアランスの違いなどによっても、製造するパンの特徴が変わります。
◎横型ミキサーの選び方
横型ミキサーは基本的にすべて大型の機械ですが、小麦粉50kg用ほどのミキサーから100kg用、200kg用など製造する量によってサイズを選ぶことができます。中種作りと本ごねのミキシングが兼用で行えるミキサーや、硬めの生地用のミキサー、吸水率が高い生地を製造できるミキサーなど、メーカーによって特徴や機能に違いがあるため、製造したいパン生地に合ったミキサーを選びましょう。
またパン生地のミキシングでは、温度管理も大切なため、ミキシングの際に生地の温度が高くなりすぎないように、ミキシングボウルの冷却機能が備わっているミキサーがおすすめです。ミキシングした生地を排出する際に、ミキシングボウルが傾く、ボウルの内側にくっつきにくいなど、排出のしやすさも選ぶポイントになります。
ほかにも、ミキサーは食品を扱う機械なので衛生面でも注意する必要があるため、メンテナンスや洗浄のしやすさも大切です。ミキシングボウル内を水洗いでき自動で排水できるミキサーなどを使用するなら、常に清潔さを保つことができます。
◎まとめ
横型ミキサーは、パン工場など大量生産を行う製パンの現場で多く使用されている製造機械です。材料を混ぜてこねる中種作りや本ごねといった、パン生地を作るためのミキシング作業を行います。KOKIでは、分割機や丸目機を中心に、現場の声を取り入れた製造機器の開発や販売をしています。製パンの製造機器に関するご相談がありましたら、ぜひお気軽にKOKIまでお問い合わせください。