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パン生地づくりでイーストがないときに代用できる膨張剤

2022年9月13日
一般家庭でのパン生地づくりでは、インスタントドライイーストがよく使われていますが、実はイーストがなくても膨張剤を代用すればふっくらとしたパンをつくることが可能です。当記事ではパン生地づくりでイーストがないときに代用できる膨張剤をご紹介します。
 
◎製パンにおけるイーストの役割
イーストとは、パン生地づくりに適した菌を集めて純粋培養したものです。発酵力が安定しており、短時間でパン生地をしっかりと膨らませることができることから、あらゆるパン生地づくりで使用されています。
 
イーストを混ぜることでパン生地が膨らむのは、菌が自身を成長させるために生地に含まれる糖分を分解し、炭酸ガスを発生させるためです。この働きを発酵と言います。発酵によって適度な炭酸ガスを保持したパン生地は、ふっくらもっちりとした食感に仕上がります。そのため、パン生地づくりにおいてイーストは欠かせない材料の1つとなっているわけです。
 
イーストは「生イースト」「ドライイースト」「インスタントドライイースト」の3種類がありますが、保存性の観点の使い勝手の良さから、一般家庭でのパン生地づくりにおいてはインスタントドライイーストがよく使われています。インスタントドライイーストは特殊な製法によって顆粒状にしたイーストで、製パンの際に予備発酵する必要がなく、直接パン生地に混ぜて使えるのが大きな特徴です。

◎イーストの代わりに使える膨張剤
パン生地をつくる際、イーストがない場合は膨張剤を代用品として使用することが可能です。膨張剤とは文字通り、食品を膨らませる効果を持つ食品添加物のことで、イーストと異なり、膨張剤は水と熱に反応して炭酸ガス(二酸化炭素)を作り出し、それによって食品を膨らむ仕組みとなっています。膨張剤は主に重曹・ベーキングパウダー・イスパタの3種類に分類されます。
 
○重曹
重曹は炭酸水素ナトリウムと呼ばれる物質のみでつくられた膨張剤で、炭酸ソーダとも呼ばれています。水と熱による反応で炭酸ガスが発生するため、製パンの過程で加えるとパン生地を膨らませることができます。
 
ただし、成分は全てガス化するわけではなく、反応によって炭酸ナトリウムが残るため、配合量によっては焼き上がりの色が濃くなったり、生地に苦みが出てきたりすることもあります。そのため、イーストの代用品として重曹を使う場合は、チョコレート入り、ココア入りなど、色や味の変化がわかりにくいパン生地をつくるときにおすすめです。

 
○ベーキングパウダー
ベーキングパウダーは、重曹のデメリットを改善した合成膨張剤です。水と熱による反応で炭酸ガスを発生させる重曹(炭酸水素ナトリウム)に酸性剤(第一リン酸カルシウムや酒石酸水素カリウムなど)、遮断剤(コーンスターチ)が加えられています。
 
パン生地に加えても重曹のように黄ばみや苦みが出たりしにくいので、製パンや製菓などさまざまな食品づくりで使用されています。ベーキングパウダーは、原材料によって炭酸ガスの発生スピードが異なるため、料理に使う際は速攻型・遅攻型・持続型の3種類から適したものを選ぶことが大切です。
 
製パンにおいては、さまざまな料理に使える万能タイプの持続型ベーキングパウダーを選ぶのがおすすめと言えるでしょう。

○イスパタ(イーストパウダー)
イスパタは、重曹に塩化アンモニアを加えた合成膨張剤です。水と熱による反応で、重曹からは炭酸ガスが、塩化アンモニアからはアンモニアガスが発生するため、重曹やベーキングパウダーと比べて膨らむ力が強いのが大きな特徴です。
 
イスパタは、反応中に発生するアンモニアガスには独特な臭気があり、パン生地づくりに使うと風味を損なう恐れがあるため、製パンの膨張剤として使用されることはあまりありません。どちらかといえば蒸し物や和菓子に使われます。もちろんパン生地づくりに使うことも可能ですが、もしパン生地に混ぜて使う場合は重曹やベーキングパウダーと併用したほうが良いでしょう。

 
◎膨張剤で変わるパンの仕上がり
イーストと膨張剤は、どちらもパン生地を膨らませる効果がありますが、炭酸ガスを発生させる仕組みは異なるため、どちらを入れるかによってパンの仕上がりは大きく変わってきます。イースト入りのパン生地と、膨張剤入りのパン生地では、仕上がりにどのような違いが出てくるのでしょうか。
 
まず決定的な違いとしてあげられるのが、パンの風味です。イーストは発酵中に炭酸ガスだけでなく、エチルアルコールをはじめとする香り成分や呈味成分などの物質も作り出します。一方、膨張剤はあくまでも食品を膨らませる作用しかないため、これらの成分を作り出すことはできません。
 
室温を調整する、パン生地を寝かせるなど、多少手間はかかりますが、フランスパンや食パンのように素材の味を楽しむパンをつくる際は膨張剤よりもイーストを使ったほうが良いでしょう。
 
膨張剤はどれを使うかによってパン生地の膨らみ具合にも影響を与えます。たとえば、重曹の場合は膨らむ力が低いため、イーストを加えたパン生地に比べると、ずっしりと重みのあるパン生地に仕上がりやすくなります。もっちり感はありますが、香りが少なく、苦みを感じやすくなるので、風味豊かでおいしいパンに仕上げるのはなかなか難しいでしょう。
 
一方、ベーキングパウダーはサクッとした軽い食感のパン生地に仕上がりやすくなります。イーストのようにパンの風味を出すことはできませんが、重曹やイスパタに比べると使いやすいので、パン生地づくり初心者さんに非常におすすめです。マフィンやスコーンなど、菓子パンをつくるときに、イーストの代用品として使ってみても良いかもしれません。

 
◎パン生地づくりで膨張剤を代用するときの分量
パン生地づくりでイーストの代わりに膨張剤を使用する際は、配合量にも注意することが必要です。たとえば、重曹を使ってパン生地をつくる場合、イーストと同じ分量を加えると苦みを感じやすくなり、おいしくないパンに仕上がってしまいます。
 
そのため、イーストの代わりに重曹を使う場合は、重曹をイーストの分量の約半分にして加えましょう。苦みが気になる場合は酸性の素材(ヨーグルトやレモンなど)を加えるのも1つの手です。
 
一方、酸性剤が配合されたベーキングパウダーは、苦みが出ないため、イーストと同じ分量を加えてつくっても問題ありません。代用する膨張剤でしっかり配合量を調整してください。

◎まとめ
重曹やベーキングパウダーなどの膨張剤は、テイストの違うパン生地をつくりたい時に非常に役立ちます。ただし、パン特有の風味は出ないため、味わい深いパンをつくるなら、イーストと併用したほうがよいでしょう。イーストと膨張剤を組み合わせながら、ぜひ自分好みのパンをつくってみてくださいね!