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パンの美味しさと食感の決め手になる発酵とは

2022年11月1日
パン生地づくりにおいて発酵は重要な工程です。発酵が上手くいくと口当たりが良く美味しいパンになります。この記事では、パン生地を発酵させる理由とそのポイントについて解説します。
◎パン生地づくりの発酵とは
パン生地づくりにおいて発酵とは、イースト(パン酵母)がパン生地に含まれる糖を使って、炭酸ガスとアルコールなどを発生させることです。粉に含まれるデンプンが酵素によってより小さい麦芽糖に分解されます。麦芽糖がイーストに含まれる酵素によってブドウ糖となり、さらに炭酸ガスとアルコールなどに分解されます。
 
発生した炭酸ガスは、パン生地の骨格であるグルテンの網目構造のなかに閉じ込められます。パン生地が膨らみ、同時に発生するアルコールや香気成分、アミノ酸は人間が美味しいと感じるパン独特の香りや味わいの元となります。パン生地を発酵することでふんわりとした弾力のあるパンになり、パンに風味や香りを生み出すのです。
 
一般的なパン生地づくりの際には砂糖を入れますが、砂糖は粉に含まれる多糖類のデンプンに比べて単糖類のため分解されやすいです。こちらもイーストの酵素によってブドウ糖と果糖に分解され、最終的に炭酸ガスとアルコールなどが発生します。
 
つまり、発酵はパンづくりにおいて、膨らみや美味しさを左右する大事な工程なのです。

◎パン生地づくりにおける発酵のポイント
発酵は使用する酵母や、作るパンによって時間や温度などが大きく異なります。そのため、家庭でのパン作りで一般的な、インスタントドライイーストを使用したストレート法での食パンや、ロールパンなどを作る際の発酵についてご紹介します。
〇一次発酵
一次発酵はフロアタイムとも呼ばれています。一次発酵で時間をかけて発酵するとイーストがしっかり働き、炭酸ガスが発生して発酵後の生地は弾力が出て締まりのある生地になります。炭酸ガスを生地のなかに閉じ込めて、充分に膨らむと高さのあるふんわりとしたパンになると同時に、風味の良いパンになります。
 
インスタントドライイーストを使用する場合の一次発酵は、30℃から40℃程度の温度で約1時間が目安となります。パン生地が発酵している間に、パン生地が乾燥しないよう容器に蓋をしたり、ラップをかけたりして湿度を保つことも大切です。
適度に発酵しているかの判断するポイントとして、パン生地の見た目の大きさが、発酵する前よりだいたい2倍から2.5倍の大きさになっていれば適正に発酵しています。
 
フィンガーチェックをする場合は、指に粉を付けてひとまとめにしたパン生地の上部を指します。発酵具合の判断の目安は、すぐに穴がふさがる場合は発酵不足で、指の形がしっかりと残ると適度な発酵具合です。周りのパン生地を巻きこんでシワがよる場合は過発酵と考えられます。
 
適度に発酵したパン生地は手にほとんどくっつかず、コシがあってグルテンの網目構造がしっかり張っているので、パン生地を両手で左右に軽く引っ張るとギシギシと抵抗する感じを覚えます。パン生地の表面に炭酸ガスの気泡がポコポコと浮くのも特徴です。
 
一次発酵が上手くいかない場合は、グルテンの膜が薄く張るくらいまでパン生地を捏ねているか確認しましょう。温度が低いと発酵に時間がかかりますので、室温での発酵が難しい場合は、オーブンレンジの発酵機能の使用や、湯煎での発酵などもの方法試してみてください。
 
また、パン生地づくりに使用しているインスタントドライイーストが古くなっていないかの確認も必要です。パッケージを開封すると少しずつ発酵力が弱まりますので、できるだけ早く使いきることもパン生地の充分な発酵のポイントです。インスタントドライイーストを計る際に、1g単位の秤を使っている場合はレシピ通りの量になっていないこともあります。0.1g単位の秤で計るか、小分けされたインスタントドライイーストを使うと正確です。例えば1gのインスタントドライイーストが必要な時は、小分けされた3gを3等分したほうが正確な場合があります。
 
パン生地を傷めると炭酸ガスが抜けて膨らまないので、優しく扱うようにしましょう。砂糖や油脂が大量に入ると発酵の邪魔になるので、適正な量であることもポイントです。

〇二次発酵
二次発酵は最終発酵、ホイロとも呼ばれる焼成前の発酵のことです。二次発酵の仕方によってパンの膨らみ具合が決まるため、パンの焼き上がりを大きく左右します。一次発酵で発生する炭酸ガスを1度抜いて、二次発酵をすると気泡が細かくなるため、肌理の細かいフワフワなパンが焼き上がります。これは気泡同士が繋がって、パン生地の中に空気を通すからです。
 
二次発酵は30℃から40℃の温度で、45分から60分くらいが目安です。その際、パン生地が乾燥しないように気を付けましょう。パン生地に芯がなく、大きさが1.5倍から2倍くらいになっていたら適正な発酵具合です。また、パン生地を優しく指で押すと、指の形が残ります。
 
ポイントはいくつかあり、生地を丸める時に表面をツルっと張り、生地の綴じ目を下にするとガスが抜けにくくなるので膨らみやすくなります。また二次発酵が終わったらパン生地の中のガスが抜けないよう、できるだけ触らないようにします。適度な発酵具合だと砂糖の影響できれいに焼き色が付きます。
 
イーストは60℃までは働くので、オーブンに入れてもしばらくはパン生地が膨らみます。そのため、二次発酵は発酵のピークではなく、直前で止めると焼成中にボリュームのあるパンになります。しかし、発酵具合を見極めていつオーブンに入れるかの判断は、ある程度経験が必要となります。
 
二次発酵が足りないと炭酸ガスがあまり発生しないので、パン生地に気泡が少なくなり、ボリュームもあまりないため、しっかりとした口当たりになり、風味も弱くなります。好みによっては短めの発酵でも良いですが、生地に気泡が少ないので火の通りが悪くなりがちで、焼成時間によっては生焼けになることがありますので、注意が必要です。
 
反対にある程度の過発酵は、炭酸ガスが多く発生するのでボリュームのあるパンに焼き上がりますが、パンの外側(クラスト)の水分が抜けて固くなることがあります。パン生地がゆるくなるほどの過発酵になると、焼いてもボリュームが出ず、焼き色も薄くなり、イーストの酸味や雑味が出て、美味しくないパンになるので気を付けましょう。
 
パン生地の発酵は、終わりに近づくほど活発になるため、もう少しというところで目を離さないようにしましょう。オーブンの予熱が足りないときや、温度が低い場合も二次発酵が進みにくく、パン生地がピークまで膨らみません。パン生地のイーストや砂糖の量が多い場合や生地が柔らかい場合、また、室温やパン生地の温度が高い場合は発酵が早いので気を付けましょう。

◎まとめ
パン生地の発酵具合は室温や生地の状態によっても変わるので、レシピの発酵時間は目安と考え、パン生地の状態を確認しながら判断することが大切です。発酵のポイントを抑えて、好みの食感の美味しいパンを焼きましょう。