パン作りにはさまざまな工程がありますが、そのひとつが成型前のガス抜きの工程です。せっかく発酵させたのになぜまたガス抜きするのか?どんな効果があるのか?理由がわからない方もいるかもしれません。この記事では、パン作りでガス抜きを行う理由やパン工場などで使用されているガス抜きと成型を行う製造機械のモルダーについてご紹介します。
◎パン作りでガス抜きを行う理由
ガス抜きの工程は、パン生地を分割して丸め、一次発酵を行ったあとに行う作業です。一次発酵では、イーストが糖分を分解することで炭酸ガスが発生して気泡ができますが、その発生した炭酸ガスを抜いて気泡をつぶすためにガス抜きを行います。発酵でふくらんだパン生地を一旦しぼませることになるので、せっかくふくらんだのになぜつぶしてしまうの?と思われる方もいるかもしれません。
パン作りの工程でガス抜きを行う理由は、パンの美味しさや食感、見た目などに影響があるからです。ガス抜きには、まずパン生地のキメを整えるという効果があります。一次発酵でパン生地にできた気泡は均一ではなく、大きい気泡や小さな気泡が多くできます。大きな気泡があるとパン生地のキメが荒くなってしまい、そのまま焼いてもきれいな形に焼き上がりません。フランスパンのようなハード系のパンは、気泡があっても問題ありませんが、菓子パンや食パンなどは、気泡を1度つぶしてキメを均一にすることで、ふんわりときれいに焼き上がり、食感や見た目が良くなります。
またガス抜きの作業をすることで、パン生地の伸びを良くします。パン生地は、グルテン膜によって粘りと弾力の成分が強化されますが、ガス抜きでパン生地に圧力を加えると、グルテンがほどよく引き締まり、生地の伸びがよくなります。その結果、ふんわりとボリュームが出るパンに焼き上げることができるのです。
さらにガス抜きは、イーストを元気にします。発酵でパン生地のなかに溜まる炭酸ガスは二酸化炭素です。イーストは生き物なので、二酸化炭素ばかりが溜まってしまうと呼吸ができず苦しくなり、活性が下がってしまいます。ガス抜きを行うとパン生地のなかに新しい酸素を取り込むことができるので、イーストも呼吸がしやすくなり活性が上がって炭酸ガスを出せるようになり、そのあとのパン生地の発酵を促進することができるのです。
◎パンのガス抜き後の工程
ガス抜きをしたパン生地は、成形してから最終発酵を行い、焼き上げへと進みます。作るパンの種類に合わせて成形を行いますが、食パンなど型に詰めて焼き上げるパンも、生地をロール状に成形してから型に詰める必要があります。成形した後に、もう1度発酵させることでパン生地を膨らませて、焼き上げる時にパンのボリュームが最大になるようにします。
ガス抜き前のパン生地は、イーストが糖分を急速に吸収するために大きな気泡が発生しますが、ガス抜き後はイーストが穏やかになっているため細かい気泡が発生し、ガス抜きで整ったパン生地のキメを壊さずに、きれいに生地が膨らみます。焼いているときにもっとも膨らむよう直前まで生地を発酵させることで、パンがふっくらと焼きあがります。ガス抜きしないままパンを焼き上げると、気泡によって大きな空洞が空いたり形がいびつになったり、弾力がなくパサパサとした食感になってしまいます。
そのためガス抜きは大切な工程ですが、ガス抜きしすぎると生地のキメがつまりやすく、固い生地になってしまうため、生地をいためないようほどよくガス抜きをすることが、美味しいパンを焼き上げるポイントです。
◎ガス抜きと成型を行う製パン機械モルダー
ベーカリーやパン工場などの大量生産を行う現場でガス抜きと成型を行う製造機械は、モルダーと呼ばれる機械です。モルダーは、製造しているすべてのパン生地をしっかりガス抜きして品質を安定させ、手早く作業をして効率化を図るために多くの製パンの現場で使用されています。
モルダーは、小型タイプのモルダーから大型タイプのモルダーまで、さまざまな種類が開発されています。テーブルに置ける卓上モルダーや小型モルダーは、ベーカリーなどの店舗で使用されているモルダーです。小型モルダーは、投入口からパン生地を入れて、ローラーで伸ばしてガス抜きを行い、そのままシート成形やロール成形を行うことができます。モルダーのローラー幅を調整することで、生地に合わせて成形する厚さを調節することも可能です。
パン工場などで使用する大型モルダーは、製造ラインに組み込んで、ガス抜きとロール巻きをライン作業で行うことができる機械です。速度調整やローラー幅の調整などを自由に行うことができ、パン生地を傷めずにガス抜きできるようになっています。圧延ローラーが2段になっていて段階的なガス抜きができるモルダーや、生地がくっつきにくい素材がローラーに使われているモルダーなど、さまざまな工夫が凝らされたモルダーが開発されています。モルダーには、カーリングネットという金属製の網が設置されており、圧延ローラーを通ってのばされたパン生地はそのままコンペアに流れていき、カーリングネットでパン生地の先端を持ち上げてロール状に成形を行います。成型されたパン生地は、そのまま型へ詰める工程やフィリングを詰めるなど、次の工程を行う機械へ流れていきます。
◎まとめ
モルダーを使うことで、大量生産を行う製パンの現場でも、しっかりとガス抜きと成型をして効率的に作業を行うことが可能になります。KOKIでは、パン生地にやさしく傷めないモルダーの開発や製造を行っています。モルダーに関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。