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夏のパン作りが大変な理由と失敗しないポイント

2023年7月18日
ジメッと暑い日本の夏は、パン作りに適した環境とはいえません。そのためパン生地を扱う際は、気をつけるポイントがいくつかあります。この記事では、夏のパン作りが大変な理由や作るときのポイント、夏作るのに適したパンをご紹介します。
◎夏のパン作りが大変な理由
パン作りに最も適しているのは、室温が20〜25℃で湿度が50〜70%の環境だとされています。日本の6〜8月といった夏は、高温多湿が特徴です。夏にパンを作る際は、作業者自身も熱中症などに気をつけて作業しなくてはいけませんが、パン生地の扱いにも一層の注意が必要になります。なかでも、発酵で重要な働きをするイーストは生き物なので、温度による影響を大きく受けます。イーストは、最も活発になる温度である32〜35℃から離れるほど動きが鈍り、60℃以上になると死滅してしまいます。
 
気温が高い夏に行うパン作りにおいて、何も気にせずにいると「レシピ通りに作ったのに過発酵になってしまった」といったことがよく起こります。過発酵が起きるのは、発酵時間が長くなったり、パン生地の温度が高くなり過ぎることなどが原因です。過発酵になると、パンの見た目や味は劣った仕上がりになってしまいます。まずグルテンが脆くなるので、パン生地はハリがなくなって、焼き上がるとしぼみます。そして、パン生地のきめは荒くなり、パサついた食感になります。イーストがパン生地の糖分を分解し過ぎるので甘みは減り、炭酸ガスやアルコールが過剰に発生した結果、アルコール臭や酸味が強いパンになります。
 
また、パン生地に含まれる水分量が多いことも、過発酵の原因のひとつになります。使用する水の量をレシピ通りにしても、湿度が高ければ小麦粉が湿気を吸うため、ゆるくてベタつく扱いにくいパン生地になってしまうのです。

◎夏にパンを作るときの失敗しないポイント
1度過発酵になったパン生地を後から修正するのは難しいため、夏は過発酵にしないための対策が欠かせません。重要なのは、温度と湿度の管理です。夏のパン作りでは、暑いときは水や材料を冷やし、湿度が高いときは水の量を減らす、というのが基本の考え方です。夏のパン作りでは気をつけるべき点が多いものの、きちんと対策してパン生地にとって良い環境を用意すれば、失敗することは少なくなるでしょう。
 
夏にパンを作るときのポイントは「冷やす」ことです。パン生地は、こねると温度が上がります。とくに夏は、室温などの影響でパン生地内の温度が上がりやすい傾向にあります。パン生地の温度が上がり過ぎないようにするために、まず気をつけるべきは仕込み水の温度です。仕込み水の温度は【3×(こね上げ温度−摩擦係数)−(粉温+室温)=仕込み水の温度】で求められます。摩擦係数は、ミキサーの種類や個人の手の体温によって変わりますが、ミキサーを使うなら6〜10℃、てごねなら-5〜3℃が目安となります。
 
たとえば、こね上げ温度を26℃に設定し、粉温と室温が共に28℃で摩擦係数が3℃の場合は【3×(26−3)−(28+28)=13】で、仕込み水は13℃が適正となります。同じ夏でも日によって気温や湿度は変わるため、夏で一括りにして考えるのは難しいです。おいしいパンを作る際は、毎回室温や粉温をはかり、それに合わせて仕込み水を冷やしておくようにしましょう。
 
過発酵を防ぐためには、小麦粉などの材料を事前に冷蔵庫で冷やしておくことも有効です。材料を混ぜたりパン生地をこねたりする際は、使用するボウルや機械にも注意を払いましょう。とくに機械ごねは、手ごねよりもモーターの熱や摩擦によってパン生地の温度が上がりやすいため、ボウルを氷水につけながら作業するなどの工夫をしましょう。こね時間が長過ぎても過発酵の可能性が高くなるので、時々機械を止めてパン生地の様子を見るなどしてください。またパンを作るときに室温が高ければ、エアコンなどを利用して涼しい環境を作ることも大切です。たとえば、キッチンが窓際にある場合、リビングの方がパン生地にとって良いこともあるので、パンを作る場所は臨機応変に変えるようにしましょう。
 
夏のパン作りにおけるもうひとつのポイントは「水の量」です。もしパンを作っていてパン生地がゆるいと感じるのであれば、湿度の高さが原因の可能性があります。その場合は、水の量をレシピに載っている量から5〜10mlほど少なくしてみましょう。ベンチタイムの際などには、パン生地の乾燥を防ぐために濡れぶきんをかけるようにすすめられることがありますが、湿度が高ければ省略するのもひとつの方法です。
 
パン生地を発酵し過ぎてしまったことに気づいても、アレンジ次第では廃棄しなくてすみます。パン生地を平らにしてチーズや具を乗せればピザにできますし、焼いてしまった後なら、バターと砂糖を使ってラスクにするのもおすすめです。いずれの方法もアルコール臭や酸味を誤魔化せるので、過発酵になってしまったパンでもおいしく食べられます。
 
もしかしたら、暑い時期は食中毒が心配な人もいるかもしれません。しかし、パンは焼成の段階で食中毒を起こすような微生物は死滅するので、その心配は不要です。ただし、焼き上がったパンに具を乗せたり何か挟んだりする場合は、使用する食材を室温で放置しないなど、気をつける必要があるでしょう。

◎オーバーナイト法で作る夏に適したパン作り
夏は、オーバーナイト法でパンを作ると過発酵の可能性を低くできます。オーバーナイト法とは、こねた後や発酵した後のパン生地を冷蔵庫の野菜室などの低温の場所に入れて寝かせて、翌日以降に焼き上げる製法です。パン生地をしっかりこねなくてもよく、発酵をゆっくりさせるため、パン生地の温度が上がりすぎる心配をしなくて済みます。また、パン生地が熟成されて風味や甘みが増す特徴もあります。
 
オーバーナイト法は、基本的にほとんどの種類のパンに適用できますが、とくにフランスパンやバゲットといったハード系のリーンなものが向いています。夏なら、フォカッチャにトマトやナス、ズッキーニなどの旬の野菜をたっぷりトッピングして焼いてみるのも良いでしょう。

◎まとめ
夏のパン作りは気をつけるべき点が多く大変な作業ですが、温度と湿度のポイントを押さえれば失敗するリスクは軽減します。過発酵に気をつけながら夏のパン作りを楽しみましょう!