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窯のびの良いパンに仕上げる業務用オーブン

2022年6月7日
パン作りで大切な、最後の工程が焼成です。製パンでは、焼き上げに至るまでに、パン生地をこねたり発酵させたり、形を整えたりとさまざまな工程を行う必要がありますが、最後の焼成がうまくいって、はじめて見た目に美しく美味しいパンが完成します。
生地がしっかりとふくらんで、こんがりとした焼き色がついたパンを作るために、業務用のオーブンは製パンの現場で欠かせない製造機械です。今回は、ベーカリーやパン工場など製パンの現場で使用する業務用のオーブンについて、その特徴や種類などご紹介します。
◎業務用オーブンの特徴
家庭でパン作りをする際は、オーブンレンジやトースター、またコンベクションオーブンと呼ばれるオーブンを使用します。コンベクションオーブンは、ヒーターで暖められた熱風をファンによって循環させて加熱させるため、オーブンレンジよりも焼きむらがなく、予熱時間も短く済むといったパン作りに適した特徴があるオーブンです。
 
ベーカリーなどで使用される業務用のオーブンは、家庭用のコンベクションオーブンよりも、さらに美味しくパンを焼き上げるための特徴があります。
業務用のオーブンは、熱源が上と下の両側にあり、下側にある炉床と呼ばれる板によって熱を蓄積し温度を保ちます。炉床には、天然石や人口石を使用した石質炉床と鉄板炉床があり、ハード系のパンには石質炉床、菓子パンなどには鉄板炉床が最適とされています。
 
業務用オーブンの上火と下火の温度は、自由に設定することが可能です。例えば、型に入っている食パンの場合、下火を強くすると型のなかでパン生地がより膨むなど、それぞれ作るパンの種類によって最適な上火と下火の温度が決まっているため、業務用オーブンには温度を自由に設定できる機能が必要になります。
また業務用オーブンには、電気ヒーターで加熱する方式やガスで加熱する方式があり、製パンの現場に合わせて導入することができます。
 
業務用オーブンのスチームは、パン生地をオーブンに入れてから、オーブンの庫内で自由にスチームを出すことができます。庫内でスチームをかけることで、外側がパリッとしたハード系のパン焼き上げることができ、スチームによって、パイやケーキのスポンジ、プリンなどの菓子類も作ることが可能です。

 
◎業務用オーブンの種類
業務用オーブンには、主にベーカリーなど店舗で使用できる中型オーブンとパン工場など製造ラインで使用する大型オーブンがあります。
 
中型オーブンは、大きな冷蔵庫のような箱型のオーブンが多く、庫内にはラックが何段も付いていて、複数の成形したパン生地を同時に焼き上げることができます。店舗の大きさや製造するパンの量によってオーブンの大きさを合わせることができ、用途に合わせてユニットを組み合わせられる中型オーブンもあります。
 
オーブンによって、特別な機能が付いている製品もあり、生地を最終発酵させるホイロという機械を内蔵しているオーブンを導入したり、ホイロのユニットをオーブンに組み合わせたりすることが可能です。焼きムラができないようにラックが回転するオーブンや、すぐに次の製品を焼けるよう炉床を冷ます冷却機能が付いているオーブン、さらに庫内を水洗いできる、ラック全体をそのまま出し入れできるといった機能がある中型オーブンもあります。
 
その一方で、大型オーブンはパンの大量生産を行う大規模工場で使用されており、大きなオーブンの庫内をトレーがゆっくり移動しながら焼き上げるものが多いです。パン生地を移動させながら焼く大型オーブンでは、トレーが移動することによる対流効果があるため、焼きむらがなくしっかりふくらみます。
 
トレーがらせん状に回転しながら進む大型オーブンやトンネルオーブン、連続焼成式オーブンと言われる庫内をコンベアが移動していく大型オーブンがあり、パンの焼き上げ時間に合わせて入口から出口までゆっくりと運行する仕組みになっています。

◎パンの焼成ポイント
パンの焼成では、野菜や肉を焼くように、ただ熱を加えるために焼くわけではありません。焼き上げの工程によって、パン生地がさらにふくらんだり焼き色が付いたりといった変化が起こるので、陶器を焼くときと同じ焼成という言葉が使われています。焼成の工程で、パン生地を上手に変化させるためには、焼き上げの温度や時間をしっかりと調整する必要がありますが、焼成では「窯のび」の良さもポイントとなります。
 
窯のびとは、オーブンに入れてからさらにパン生地がふくらむことを言い、最後にしっかりとふくらむパン生地は、窯のびが良いと言われます。温度の高いオーブンにパン生地を入れると、生地自体の温度もゆるやかに高くなっていき、イーストがさらに発酵してガスを出すためふくらみます。この現象は生地が60度になるまで続き、60度を過ぎると生地のグルテンに含まれていた水分が放出されて、さらにふくらみます。そして100度以上になると、パンの外側のクラストが形成されていき、パンの焼き色や香ばしい香りが生じます。
 
窯のびの良いパンを焼き上げるためには、オーブン内の温度を保つ密封性が大切です。また均一に熱が伝わらないと、片のびと言われる生地の片方だけがふくらむ現象が起きたり、表面の焼き色にムラがでたりするため、オーブンの場所によって熱むらが生じないことも大切になります。
 
ハード系のパンは、焼くときにスチームで表面を濡らすことで、生地表面に火が通って固まるのが遅くなり、生地が伸びやすくなるため、なかの生地がしっかりとふくらんでクラストが薄くなります。さらに水分と生地表面の小麦粉が反応して糊状になり、表面がパリッとしたパンに焼き上がります。

◎まとめ
パンの焼成は、パンの出来上がりを左右する大切な工程です。業務用オーブンは、加熱の方法やスチームなど、家庭用オーブンとは違った特徴があり、しっかりとふくらんで窯のびの良いパンを作るために最適です。
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