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性質・分量・温度で何が変わる?製パンと水の関係を解説

2022年7月12日
製パンには仕込み水が欠かせません。仕込み水とは、パン生地に加える水分のことです。仕込み水は基本的に水が使われますが、どんな性質の水を加えるか、また分量や温度によってパンの仕上がりに違いがでてきます。この記事では、製パンと水の関係についてご紹介します。
◎パン生地と水の性質
パン生地の仕込み水に使われるのは基本的に軟水または硬水のいずれかです。この2つは硬度の高さによって区分されます。
 
硬度とは水に溶け込んでいるカルシウムとマグネシウムの量を炭酸カルシウム量に換算して表した数値のことです。硬度の基準はさまざまですが、世界保健機構(WHO)が設けた基準では、1,000mlあたりに含まれるミネラルが120mgを超えるものを硬水、120mgを下回るものを軟水と区分しています。
 
どちらもパン生地づくりに使用してもとくに問題はありませんが、製パンにより適していたものを使うのであれば100mg/ml程度のやや硬水(中硬水)がおすすめです。この程度だとパン生地がまとまりやすくなる上、発酵がスムーズに進みます。
 
硬度がさらに高くなると、パン生地は締まりすぎてちぎれやすくなってしまいます。硬水はフランスパンなどのリーンなパン生地に適していますが、硬度が高すぎると発酵が遅くなるため注意が必要です。硬水を使ってパン生地をつくる場合は、イーストを増やす、パン生地の温度を高くするなどの対策をとりましょう。反対に硬度が低くなりすぎると、今度はグルテンが軟化し、パン生地がダレやすくなってしまいます。この場合はほかの材料を加えてパン生地の粘り気を抑えるのがおすすめです。あんパンなどの菓子パンをつくる時には軟水が適しているといえるでしょう。加えて、製パンに軟水を使う場合は塩の配合量を増やす、炭酸カルシウムを加えるといった対策も有効です。
 
パン生地は水のpHによっても仕上がりが異なります。イーストが弱酸性で活性化する性質があることから、製パンにはpH値は6~7が適しているとされています。最近では、パン生地づくりにアルカリイオン水を使う人も増えてきていますが、pH値が8.5~9.5程度あるため製パンには不向きです。イーストの活性化を抑制して発酵が進みにくくなるため、アルカリイオン水を使ってパン生地をつくる場合は酢をほんの少しプラスするなどの対策をとりましょう。

◎パン生地と水分量
パン生地をつくる時は加水率も重要なポイントとなります。加水率とは、パン生地に使用する粉のトータル量を100%と考えた時の粉量に対する水分量です。
味わいに大きな影響があるわけではありませんが、作業性や食感に関わってくるので、パン生地をつくる場合は加水量にも目を向けてみましょう。
 
製パンに適した水分量はつくりたいパンの種類によって異なりますが、一般的には加水率65%前後で加えられます。グラム数でいえば、小麦粉100gに対して60gの水を加えるイメージです。加水率を65%前後にすると、こねやすくてまとまりやすいパン生地に仕上がります。発酵の進みも良く、やわらかくてソフトな口当たりのパンができあがるので、パン生地づくり初心者さんにはとくにおすすめです。食パンや菓子パンをつくる時にも適した水分量なので、ぜひ目安にしてみてください。
 
一方でベーグルなど、水分の少ないパン生地をつくる場合は、加水率を55~60%にまで下げるのがおすすめです。粉の割合が多くなる分パン生地がかたくなるため作業は少し大変になりますが、こうすることで焼き上げた際に目が詰まっていて噛み応えのあるパンに仕上がります。
反対に、フランスパンやカンパーニュなどハード系のパン生地をつくる場合は加水量70~80%程度が適しています。こちらは水分が多いため、パン生地をまとめる際はヘラなどを使ってこねすぎないようにすることがポイントです。焼き上がりは大きな気泡が多く、モチモチとした食感になります。
 
パン生地づくりで水の分量を計算する際は、使用する粉の産地に配慮することも必要です。なぜなら、外国産の小麦粉と国産の小麦粉では吸水性が異なるためです。外国産小麦粉のほうが国産小麦粉よりも吸水性が10%程度高いとされています。外国産小麦を使うパン生地レシピで国産小麦を使用する場合は水分量を少し減らす、反対に国産小麦を使うパン生地レシピで外国産小麦を使用する場合は水分量を少しだけ増やしましょう。
 
また、パンのなかには牛乳や生クリーム、卵などが使われるものも数多くあります。加水量は粉に対しての水分全てが含まれるため、副材料を使用してパン生地をつくる場合はその分も考慮して加水量を計算することが必要です。レシピに沿ってつくる場合は問題ありませんが、自分で材料の分量を考える場合はこの辺りも十分注意しましょう。

◎パン生地と仕込み水の温度
最後にもうひとつ、製パンで注意したいのがパン生地をつくる時に使う水の温度です。製パンを行うお店では計算式があり、それに則って温度管理をしているほど、仕込み水の温度はパン生地づくりに大きく関わってきます。
 
例えば夏場にパン生地をつくる場合、レシピにぬるま湯を使うと書いてあったからとその通りにすると、パン生地がダレやすくなる上、発酵が早く進みすぎてしまうことがあります。反対に気温が低い冬場はパン生地が冷えやすいため、冷水を使うと余計に冷えて生地がこねにくくなってしまいます。
 
このように、製パンに適した水温は、夏場と冬場で大きく変わってきます。家庭でパンづくりを行う場合、お店のように無理して温度管理をする必要はありませんが、夏場と冬場でどれぐらいの水温が製パンに適しているのか覚えておくと、作業がスムーズになるでしょう。製パンに適した水温は人によって意見が異なりますが、一般的に夏場は15~20℃、冬場は25~30℃がパン生地づくりに適しているといわれています。ただし、こちらは粉を常温保存している場合の目安となるため、粉を冷蔵庫または冷凍庫で保管している場合は水温をもう少し低くしたほうがよいかもしれません。

◎まとめ
製パンに欠かせない材料のひとつである水は、どのような性質のものを選ぶか、また分量や温度をどのぐらいにするかが非常に重要になってきます。味に大きな影響を与えるわけではありませんが、パン生地のこねやすさや発酵、焼き上がりが変わってくるので、これからパンづくりをする際はぜひ参考にしてみてください。